オトナの教養 週末の一冊

2020年7月23日

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 新型コロナウイルスによる外出自粛や店舗休業で、収穫した作物を廃棄する農家の状況がメディアで度々報じられた。予想もしていなかった事態に独自の取り組みを進める農業従事者はどのような動きを見せているのか。『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文春新書)を上梓した川内イオ氏にインタビューした。

(Fertnig / gettyimages)

 川内氏は広告代理店勤務を経て、2003年からフリーライターとして活動。一時、スペインに移住し、4年間、スペインサッカーを中心に執筆した後、帰国してデジタルサッカー誌編集部、ビジネス誌編集部での勤務も経験している。現在は自らを「稀人ハンター」と名乗り、日本や世界各地で活躍する「規格外の稀な人」を取材する。

 本著は衰退産業の代表とされてきた農業に対し、新たな取り組みをする変革者10人を紹介しながら、日本農業の課題と解決策、イノベーションのヒントをあぶり出している。

 これまでの稀人ハンターとしての活動の中で、農業には全くと言っていいほど関わっていなかった。きっかけは本著の最初の事例として出てくる、引く手あまたのピーナッツバターを製造する「杉山ナッツ」の杉山孝尚氏への取材だ。「世界4大会計事務所のひとつKPMGニューヨーク本社で会計士をしていた人が好奇心だけで農家になり、美味しくてよく売れるピーナッツバターを作って、『農業って最高に面白い』って言っている。これまで高齢化や耕作放棄地など良いイメージがなかったけれども、楽しそうに感じた」と川内氏は振り返る。農業界の稀人をハンティングする日々を始めた。

 生産から集荷、販売まで、梨農園の500以上の業務を改善させた東大卒の「畑に入らないマネージャー」、休耕田を活用した無農薬・無化学肥料栽培のコメから国産エタノールを作り、そこから地域を循環するエコシステムを作り出した元エリート銀行員、牛に乳酸菌を中心とした有用菌を入れた飼料を与えることで、これまでにない効果を持つたい肥を生み出した「スーパーたい肥メーカー」。本著はさまざまなアプローチから農業を変革した人たちのストーリーが紡がれている。「収入が低かったり、なり手がいなかったりと、やはり農業の課題は山積み。けど、希望を見せてくれる人もいる」と川内氏は語る。

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