2024年7月17日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月4日

 キッシンジャー米元国務長官が、ワシントン・ポストへの6月2日付の寄稿において、介入した後のことについて政治的コンセンサスがないと、また新たな紛争に導く可能性があり、政治的目的がはっきりしていないと、介入を長く維持できなくなる。一つの人道的悲劇を避けるために、新たな悲劇を生む可能性もある。介入は、超党派で国家全体として考えるべき問題である、として、シリア介入への反対を唱えています。

 すなわち、シリアでは、人道的必要が戦略的必要とマッチしているようだ。シリアは、中東の要に位置し、イランの中東政策の柱として、イスラエル国家に反対するハマスや、レバノンの統一を妨げているヒズボラを支援している。 

 米国としては、人道的だけでなく、戦略的にもアサド政権の崩壊は利益となる。

 しかし、軍事的作戦を行うには、二つの前提条件がある。その一つは、現状を破壊してから、そのあとの政治についてのコンセンサスが必要であるということだ。単に現在の政権を倒すだけでは、各武装勢力が競い合い、周辺諸国も異なる勢力を応援して、新たな内戦に導く恐れがある。

 第二に、米国の国内政治上、国民の支持を得られる期間のうちに達成できる目標がなければならない。シリアの場合こういう条件を満たすかどうか疑問だ。

絶対的な(ここでは倫理的)基準を表明する際には、微妙な意味合いを勘案することが必要だ。シリア問題は、超党派的に議論されるべき問題だ。

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 キッシンジャーはシリア介入に反対しています。シリア介入を許す上記二つの条件は、もともと存在しない条件です。したがって、キッシンジャーの介入反対の意見は論理的です。


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