2024年12月23日(月)

地域が主役の「在宅ケア時代」

2012年7月10日

 癌の治療が、入院からほとんどが外来を中心とした通院でのフォローとなったのは、癌になっても治療を受けながら職場復帰もできるなど、ある意味前向きな点も多くあります。ことに若い年代の方にとって、癌と診断されても、けっして悲観することなく、果敢に治療にまい進できるといった状況にもなっています。

 しかしながら、「がん」という言葉の持つ何とも言えない悲壮感は、まだまだぬぐいきれていません。実際には見つかった時すでにかなり進んだ状態で、その後の時間も限られる事態にも直面します。

癌について相談できる場所

 癌患者の多くは、医師に病名を告げられた時には頭が真っ白になり、そのあとの説明はほとんど聞こえていない状況で、次なる選択を迫られるといった事態に陥ります。

 そんな中で、インターネットをはじめ、たくさんの情報は手に入れようと思えばすぐにでも手に入る状況となりました。WEBサイトを利用できる人はよいのでしょうが、そうはいかない人も大勢います。また、そういった情報は、有り余るほど手に入れたとしても、「どれが自分の状況にぴったり合っているのか」と判断に迷い、かえって不安を募らせる結果を招くこともあるのです。

イギリスのエジンバラにある、マギーズセンター第1号 (後述)

 こういった事態は世界共通で起こっています。これに対して、癌の病態のどの時期でも、いつでも相談に乗り、ゆっくり自分で考え判断ができる力を取り戻せるようにサポートすることを目的につくられた、イギリスの「マギーズキャンサーケアリングセンター」という機関があります。この話を2008年11月に聞いたときに、「これは今すぐ日本にも必要だ」と思ったものです。

「もっと早く在宅という道を知りたかった」

 私が在宅ケアに関わるきっかけは、2つ上の姉に40歳の時に転移性の肝臓癌が見つかったことからでした。癌があまりに一気に広がった状態だったために、余命1カ月と宣告されました。残された時間が少ないのであれば、子供たちとの時間を過ごせるよう家に連れて帰れないかと思い、実践しました。しかし、当時は在宅ケア、しかも末期癌の在宅ホスピスなど、聞いたこともない状態で何とかあちこちの情報を集め、非常に苦労したものです。 (この内容は、拙著『在宅ケアの不思議な力』<医学書院>の第1章に詳述しています)


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