2022年12月8日(木)

中東を読み解く

2020年8月5日

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イスラエルの関与が疑われる理由

 レバノン政府が事故説に傾く中、事故ではないと主張した人物がいる。他でもないトランプ米大統領だ。大統領は4日の記者会見で、根拠を示さないまま「米軍高官らは爆弾のようなものが原因と考えているようだ」と述べたのだ。事故ではないとすると、爆発はミサイル攻撃やテロ、破壊工作などが原因だったことになる。

 仮にトランプ氏が言うように、事故ではないとすると、疑いの目を注がれるのはイスラエルだ。爆発当時、上空をイスラエル軍の戦闘機が飛行していたとの目撃証言もある。イスラエルが取り沙汰されるのは最近、宿敵であるレバノンのシーア派武装組織ヒズボラとの緊張が高まっていたからだ。

 イスラエル軍は7月後半、武装集団がレバノン領からイスラエルに侵入しようとしていたのを阻止したことを公表。また8月2日夜にもシリアからゴラン高原に侵入して、爆発物を仕掛けようとしたテロリストをせん滅したと発表し、シリア領内のシリア軍やヒズボラの拠点を空爆した。しかし、イスラエル側はベイルートの爆発への関与は否定している。

 ヒズボラはレバノン国内で政府軍や他の武装組織を凌ぐ圧倒的な軍事力を誇り、事実上、レバノンの支配者だ。今回爆発が起きた港湾地域に秘密の施設を保有し、武器の密輸を行っていると見られている。ヒズボラが爆発の原因になった「硝酸アンモニウム」を貯蔵していたのかは不明だが、「イスラエルがヒズボラを弱体化させ、レバノン国内での評判を落とすために破壊工作を行ったことも考えられる」(ベイルート筋)との疑惑は否定できない。

 ヒズボラの生みの親であるイランでもこのところ、相次いで核やミサイル施設、発電所などで火災が発生、イスラエルの情報機関モサドの関与が疑われている。そうしたことも今回、イスラエル犯人説が根強く流れる理由だが、場当たり的と見られるトランプ大統領の「事故ではない」という発言は存外、的外れではないかもしれない。

  
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