2024年11月22日(金)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2020年8月25日

中国が米国と断交するシナリオ

 ただ、戦争こそしないものの、米国が台湾国家承認をした以上、「1つの中国原則」が否定されることになる。これはもはや最後の一線を越えたもので、中国は黙っていられない。考えられるのは米中国交断絶にほかならない。そこで、言い出しっぺはどっち側かだ。米国はしたたかで台湾と国交樹立しながらも、中国との断交を言い出さない場合、中国はどう対処するかが難題中の難題になる。

 米国が台湾の国家承認すれば、諸国が追随して中国と断交しないまま台湾と国交樹立するだろう。世界各国にとってみれば、むしろ「2つの中国」のほうが都合が良いからだ。問題は中国がこれを受け入れられるかだ。原則論からいけば、中国は米国をはじめ台湾承認した諸国に断交を告げなければならない。

 ただ断交は諸刃の剣。ここまでくれば、国連やWHOなどの国際機関はいやでも、正統性を手に入れた中華民国台湾の加盟を認めざるを得なくなる。するとこれらの国際機関においても中国はまたもや「2つの中国」の難局に直面する。つまり、国連は1971年のような代表権承認で中華人民共和国の中国代表権を認め、中華民国政府を追放する決議の採択を行わないまま、諸国同様の姿勢で「2つの中国」を容認することだ。もちろん中国は毅然とした態度で自ら国連から脱退するのも理論上取り得る選択肢ではあるが、なかなか現実的にできるものではない。

 米国の対中強硬姿勢は何もトランプ共和党だけではない。民主党は8月20日の全国党大会で採択された党綱領から「1つの中国政策」を削除した(8月21日付ドイチェ・ヴェレ)。11月の大統領選でトランプ共和党と戦うには、対中姿勢の強硬度が主な指標となった以上、民主党も反中に躍起した。故に、たとえバイデンが勝ったとしても、方向性を抜本的に変えることはもはやできない。


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