WEDGE REPORT

2020年9月24日

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西田宗千佳 (にしだ・むねちか)

フリージャーナリスト

パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連などを中心に、様々な媒体に寄稿している。著書に『ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘』(KADOKAWA)など

 自動車業界は100年に一度の変革期にある」と言われる。その変革の中でも中核となる変化が「自動車のソフト化とアップデート対応」だ。

 ソニーが作る
「IT的な発想」の車

 2020年1月、ソニーは自社で「VISION−S」という電気自動車を開発中であることを公表した。VISION−Sは主に日本・欧州のチームが連携して開発を進めているが、開発機材のうち1台が、この7月末、日本に戻ってきた。公道を走れる状態ではないが、一部プレス向けにソニー社内を走る試乗会も行われている。

ソニーが自社開発する電気自動車「VISION-S」 (MUNECHIKA NISHIDA)

 ソニーはVISION−Sの市販化を予定しておらず、OEMとしての供給も考えていない。ではなぜ開発するのか? 開発責任者で同社執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏はその狙いを「電気自動車になるとソフトウェア制御の比率が上がり、概念としてはサーバーとクライアントの連携するIoTに近づく。さまざまな機能がソフトウェアで〝アップデート〟していく、ITの論理で作った自動車を作りたかった」と説明する。

 ソニーは自動車向けのセンサーなどを商品化しており、自動車メーカーとの協業を進めている。VISION−Sはそれをさらに進めるためのテストケース的な意味合いを持つ。例えば自動運転機能や乗り心地などは、センサーから得られたデータをクラウドでAIが解析し、さらに実車に「アップデート」でフィードバックする。その過程では、ソニーがクラウドを使って運営しているタクシー配車プラットフォーム「みんなのタクシー」で、運転手などから得られたデータも活用するという。

 ただ、そうしたことは既存の自動車で実験できそうなものだ。そうしない理由は何か?

 「自動車の伝統は安全性重視。きわめて重要なことだが、『動いているものは変えない』という発想が中心だ。これは、積極的に変えていくIT的な発想とは真逆」(川西氏)。あえて自動車メーカーとは違う論理で作ってみせ、その経験をもって、今後のビジネスを有利に進めたい、と考えているのだ。

 携帯電話などの回線を使い、内部ソフトウェアをアップデートする仕組みを「OTA(Over The Air)」という。「OTAで進化する車」はすでに存在する。その代表例は「テスラ」だ。テスラはナビやAV機能など、走行に関わらない部分はもちろん、車高調整や自動運転など、多数の機能が「OTAによるアップデート」で進化する。VISION−Sが目指す「ITの論理で作られた自動車」が、ある部分テスラのフォロワーであるのは間違いない。

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