攻勢目立ったバイデン氏
今回のディベートでは、トランプ氏がバイデン氏を「副大統領を含め、47年間も公職に就いてきたのに何もしなかった」などと批判し、同氏の息子が外国から巨額の金を受け取っていた疑惑を繰り返して、「汚職まみれの政治家」というレッテルを張ろうとした。
これに対してバイデン氏は効果的なカウンターパンチを浴びせてはね返した。同氏は大統領が精力的に遊説を行っている間に、ディベートに備えて徹底的にリハーサルを重ねてきたとされ、その成果が出た格好だ。発言の間、マイクオフでトランプ氏に邪魔されなかったこともプラスになった。
新型コロナウイルスの感染拡大について、大統領が「ウイルスは中国のせい」「収束が見え始めている」などと自らの対応を弁護したのに対し、バイデン氏は「22万人もの多くの国民が死亡した責任を負うものは大統領職にとどまるべきではない」と、トランプ氏の資質に大きな疑問を呈した。
トランプ大統領が根拠を示さないまま唐突に、バイデン氏がロシアから350万ドル(3億6000万円)もらっているなどと金銭問題を追及した際には、大統領が納税申告書を公表していないことを引き合いに出し「何を隠しているのか。外国企業はあなたに多くを払っている」と逆襲した。
黒人差別などの人種問題では、大統領が「ここにいる誰よりも私は人種差別主義者ではない。(黒人奴隷解放をした)リンカーンを除いて、自分ほど黒人社会のために貢献した者はいない」と誇示した。これにバイデン氏は「この場にいる“リンカーン”は近代史上、最悪の人種差別主義者大統領の1人だ。あらゆる差別主義者に油を注いでいる」と皮肉交じりに反駁した。
選挙戦は残すところ10日を切った。ニューヨーク・タイムズによると、すでに4800万人が期日前投票を行っている。トランプ陣営のステペイン選対本部長は共和党関係者に対し、トランプ氏の再選の道が「危険なほど僅か」であることを認めているという。その意味で大統領は今回のディベートでバイデン氏を圧倒できなかったのは痛い。大統領としては激戦州で、同氏の「石油産業の閉鎖」発言を喧伝し、土壇場の大逆転につなげたいところだ。
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