2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年11月2日

 11月3日の米国大統領選挙を前に、メディアでは民主党の「青い波」が押し寄せているとの記事が目立つようになり、大統領選挙、そして上院選挙でさえ敗北は避けがたいという悲壮感が共和党内に広まっている。

ChrisGorgio / iStock / Getty Images Plus ChrisGorgio

 共和党内の悲壮感の理由の一つは、大統領選献金額で大きな差がついていることである。8月初旬の時点でほぼ均衡していた選挙資金残高が、9月のバイデン陣営と民主党全国委員会への献金額合計は3.83億ドル、トランプ陣営と共和党全国委員会の合計は2.48億ドルだった。トランプ陣営は選挙の終盤にきてテレビ広告を削減するなど一番効果的な活動を削らざるを得なくなっている。

 2つ目は、上院選でも献金額に大きな差が生まれたことだ。接戦といわれる15の上院選の全てで民主党候補が共和党候補の献金額を上回った。15候補の合計は民主党が約3.70億ドル、共和党は約1.50億ドルだった。

 3つ目は、期日前投票の多さである。10月28日までには7000万人以上が期日前投票をしたとされるが、圧倒的に民主党支持者が多い。この中でも黒人と女性が人口比で圧倒的に多いとされ、これもバイデン氏と民主党に有利と思われる。

 4つ目は、トランプ支持者のトランプ離れである。共和党支持者が多い高齢者、現役軍人までもがトランプ離れをしている。高齢者のトランプ離れは、大統領が新型コロナを深刻な問題と受け止めず犠牲者を増やしたためである。現役軍人を対象とした9月の世論調査では、バイデン氏支持がトランプ氏支持に比べて4%多かったが、軍人は通常共和党を支持することを考えると、これは画期的な数字である。

 トランプ大統領への支持率を低下させている主な要因は、次の通りである。

 1つ目は、新型コロナ感染後の言動である。感染しても新型コロナをたいしたことがないと軽視し、自分は不死身と誇った。すばらしい治療があり、設備があるからかかっても問題ない、と新型コロナを恐れるべきでないと豪語しても、大統領が受けた治療は大統領だからこそ受けられた治療と設備であり、普通の市民には手は届かない。

 2つ目は、「トランプショー」に、人々は飽きてきた。4年前は新鮮で政治の部外者として伝統的エリート層を痛烈に批判するトランプに市民が同調した。しかし、大統領となったからには本人が政治エスタブリッシュメントの一員である。特に新型コロナで多くが感染し、国民が不安と経済難に苦しむ中で、当事者としての意識が欠如した無責任な言動が生む混乱と騒々しさに支持者の中にも疲労感が生まれた。

 共和党内では断崖絶壁に立たされている、歴史的大敗北を喫すかもしれないと悲壮感が漂い始め、共和党議会でも大統領から距離を置こうという動きが目立ち始めている。

 とはいうものの、共和党はトランプの党となってしまっており、トランプなくして勝てず、トランプあっては負けるというジレンマに陥っている。

  
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