2024年5月27日(月)

Wedge REPORT

2020年11月7日

 もしベトナム人が豚などを盗んでいたとしても、販売する相手が見つからなくてはビジネスにはならない。そのツールとなっているのが「SNS」だ。

 在日ベトナム人にとってSNSは、母国にいる家族や友人の近況を知ったり、連絡を取るために欠かせない。一方で、ベトナム人同士でやりとりが交わされるSNSコミュニティには、いかにも怪しい投稿が目につく。盗品や偽造品の売買、犯罪への勧誘などの宣伝で溢れているのだ。たとえば、ベトナム語でなされたこんな投稿である。

経営協力。補助業務。
 月収1000万〜1500万ドン(約5万円〜7.5万円=筆者注)+手数料。
 簡単な仕事で、マーケティングは当方が担当。

 日本語にすると分かりにくいが、敢えて直接的な表現を避け、窃盗の実行犯を募っている。事情に詳しい在日ベトナム人がこう解説してくれた。

「月収5万円は、ベトナムの平均的な農民の月収の2倍ほど。しかも手数料まであるなんて、普通の仕事ではありません。こうした投稿は、ベトナム本国からなされるケースが多い。日本にいるベトナム人をスカウトし、指定した品物を盗ませようとしているのです」

 実行役が日本で盗んだ品物はベトナムへと運ばれる。人気の盗品は化粧品や薬、サプリメント、粉ミルクなどである。

 盗品の「運び役」を募集する投稿もよくある。もちろん盗品とは告げず、ベトナムへの無料航空券と引き換えに「荷物を運ぶ仕事」だと宣伝される。

盗品の販売ターゲットが、日本に住む同胞へとシフト

 こうした日本とベトナムを結び盗品ビジネスは、新型コロナの影響を大きく受けた。航空便が運行が止まり、日本からベトナムへ盗品を運ぶことができなくなったからだ。そんな事情もあって、盗品の販売ターゲットが、日本に住む同胞へとシフトしている可能性がある。

 2012年末には約5万人に過ぎなかった在日ベトナム人の数は、7年間で8倍にも急増した。40万人以上という在留者数は、「市場」としても十分だ。

 SNSで売られている品物には、外国人の身分証明書である在留カードや日本語能力試験の合格証書、日本の運転免許証まである。すべて偽造品で、在留カードは不法滞在者、免許証は運転が必要なアルバイトを希望する留学生らが購入する。

 値段は投稿には載っていないが、「2〜3万円程度で購入が可能」(在日ベトナム人事情通)なのだという。ベトナム語のSNS空間は、まさに犯罪や不正の温床と言える。

 在日ベトナム人が急増したのは、「実習生」や「留学生」が増えた結果である。ベトナム人犯罪の8割近くも、実習生と留学生が起こしている。今回の事件の容疑者にも、現役の実習生や、実習生として来日した不法滞在者、また留学生が含まれていた。では、なぜ彼らは犯罪に手を染めてしまうのか……。

(つづく)

  
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