2024年11月28日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年10月2日

 消費税増税の目的は、財政を再建し、将来の社会保障を確実なものにするということだったはずだが、民主党政権は、自民党の「消費税増税で公共事業を」という要請を受け入れた。

 自民党は、今国会に「国土強靭化基本法案」を提出しているが、7月9日の衆院予算委員会で、野田佳彦総理は、自民党の議員に対し「東日本大震災の教訓を踏まえて強靭な社会を構築するというのは共通認識だ」と、自民党の法案通りの言葉を使ってみせた(朝日新聞7月12日)。

 さらに、野田総理は、7月18日の参院消費税増税関連特別委員会では、「(消費税増税で)財政の機動力が回復した時に、機動的に民間資金と財政投融資資金も含めて対応する」と答えた(朝日新聞7月19日)。

 国土強靭化基本法案には、「一極集中の是正、多極分散型の国土の形成、国土の均衡ある発展」など、自民党黄金時代の懐かしい言葉が並んでいる(自民党のホームページによる)。そのために100兆から200兆円の公共事業をしようというものだ。

 消費税増税の目的は、財政を再建し、将来の社会保障を確実なものにする事ではなくて、いつの間にか公共事業の拡大になってしまったようだ。なお、消費税を増税しても、将来の社会保障は少しも確実にならないことは、すでに本誌2012年3月号「年金議論を避けるな 社会保障は維持できない」に書いた。その要点は、消費税を増税して現在、高齢者1人当たりの社会保障支出を増やしてしまえば、将来高齢者が増えるのだから、将来の社会保障支出はさらに増えるということである。

 だから、財政再建のためには、消費税を上げることよりも社会保障支出を抑えることの方が重要だということだ。

国土強靭化が目的なら批判は難しい

 話を戻す。民主党の09年8月の衆院選挙でのスローガンは「コンクリートから人へ」だったが、いつの間にかこの看板を下ろし、自民党と一緒になって「人からコンクリートへ」の政党になってしまった。現在の、自民党のコンクリート拡大策の理屈付けは、「東日本大震災の教訓を踏まえて強靭な社会を構築する」ということだ。


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