2024年5月3日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2012年10月2日

 そもそも、自民党が、子ども手当という名称に嫌悪感をいだき、児童手当に名称を戻すことにこだわったのは、これで自分たちは落ちたと思っている落選議員がたくさんいるからだという。子ども手当に集票効果はあったのだ。

 にもかかわらず、民主党が「人からコンクリートへ」になったのはなぜだろうか。子ども手当という制度をつくってしまえば止めることはできない。できた以上は、どの政治家でも止めることはできない。誰に投票しようが、子ども手当は支給される。

 一方、公共事業はそうではない。公共事業とは、有力な政治家が地元にもってくるもので、誰が政治家をしているかによって異なるものだ。今は、大っぴらにはできないだろうが、昔は有力政治家の天の声でどの建設会社に仕事が下りるかも決まった。政治家のために必死に運動した人々だけに与えられた特権である。

 風が吹いていれば、子ども手当で票が入るかもしれない。しかし、風が止めば人々は投票所に来てくれない。誰に投票しようが、そもそも投票しなくても、子ども手当は支給され続ける。それでは票は集まらない。

 民主党は、権力を取って、このことが分かったのだろう。結局のところ、民主党は選挙をしないことに力を尽くしているように思える。選挙をすれば落ちると分かっている人々が大部分なのだから、何としても選挙をしたくないのは当然である。

 すると、民主党は4年間、権力の座にあろうとしている。今まで自民党のために選挙を手伝っていた建設会社も、背に腹は代えられない。権力の座にある政党に近付いて、なんとか仕事をもらおうとする。民主党には逆風が吹いている。そんな時、確実に票が期待できるのであれば、前回選挙のスローガンを捨てることなどなんでもない。「人からコンクリートへ」になるのは当然だ。

◆WEDGE2012年9月号より

 

 

 

 

 

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