世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年1月27日

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 香港では中国による民主派の弾圧が加速している。1月6日には50名を超える立法会議員や反体制活動家らが逮捕された。その中には米国人弁護士も1名含まれていた。

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 彼らの逮捕容疑は、国家安全法違反である。具体的には、昨年7月に行われた予備選挙に立候補したり、あるいはその予備選の組織者として役割を果たしたことが罪に当たるとされた。つまり、今回の逮捕は、民主派として選挙運動をすること自体が国家安全法上の犯罪であることを明確にした。

 昨年の予備選挙は親北京派の候補に対抗する民主派の候補を選ぶことを目的に行われ、60万人の香港人が参加した。共産党は2019年秋の区議会選挙における民主派の地すべり的勝利が再現されることを恐れていた。香港のキャリー・ラム行政長官は、「北京の計画に抵抗することを目的に立法会の議席を得ようとすることは、国家権力の転覆になりかねない」と警告していた。なお、昨年予定されていた立法会選挙自体は延期されている。

 中国が香港でしていることは、英中共同声明(共同声明という名称であるが、国家間で批准された条約である)に違反する行為である。その上、国家安全法を施行し、民主主義を求める香港人を苛酷に弾圧している。国家安全法というのは対外的な中国の安全保障を確保するためのものではなく、国内の民主主義支持者やその他の中国共産党に反対する人を弾圧するためのものである。

 今回の逮捕は昨年7月の予備選の参加者や組織者を主として狙ったものであるが、これは事後法による処罰であり、罪刑法定主義に真っ向から挑戦している事態である。実行されたときに処罰の対象ではなかった行為を事後に作られた法で裁いているのであって、実に野蛮な行為と言わざるを得ない。条約違反、事後法による処罰は看過できないことである。

 こういうものには抗議し、かつ代償を支払わせるべきであろう。しかし、米の対応も国際社会の対応もいろいろな面で不十分である。米国のアントニー・ブリンケン次期国務長官は、1月6日に日、「民主派の抗議デモ参加者の一斉逮捕は普遍的権利を勇敢に主張している人への攻撃であり、バイデン・ハリス政権は香港の人々とともにあり、北京の民主主義弾圧に反対する」と述べた。1月8日付けのウォールストリートジャーナル紙社説‘Communist Hong Kong’は、「ブリンケンのコメントは歓迎できるが、中国は言葉だけが心配すべきことなのかを見極めようとしている」と指摘するが、その通りであろう。

 バイデン政権は、民主主義国を糾合して、香港に関する有志連合を結成し、中国を厳しく非難し、実際に中国の損になるようなことをやっていくべきである。米国ができる最も有効なことはドルの使用への制約を含む金融制裁であるように思われる。

 なお、今回の一斉逮捕は、米国が大統領選挙で揉めて通常の状況ではない時を選んで、中国が断行したという説があるが、確証はない。

  
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