2024年4月20日(土)

家電口論

2021年1月30日

ロボットという特殊な商品

 ロボットというのは、特殊な商品です。例えば、AIBO。初代、二代目のスペース感のあるデザインは面白かったのですが、三代目の媚びる様な犬のデザインはパッとしませんでした。AIBOが、外観を変え続けたのには、理由があります。CPU、センサーの進化によって、できることが大きく異なったからです。ロボットの開発者は、その時のベストで上市するわけですが、技術開発は止まりません。このため、新しいのをということになります。

 しかしロボットはペットに似ます。新型が出たからと言って、乗り換えるという分には行きません。一緒に過ごした想いでがあります。要するに、機能を強調してしまうと、あるところで全とっかえするために、感情移入することができなくなるのです。

 しかし、動作を限ってやるとどうでしょうか? 人間だって、できる動作は限られています。体操選手のように、すごい動きをする人もいますが、普通の人の動きは決まっています。そして、今は、ハードよりプログラム変更による機能アップの時代です。LOVOTをつくった林代表も、今後も、LOVOTのハードをいじる積もりは全くないそうです。

 実はLOVOTは完成品が仕上がり、世に出すまで、ほぼ一年かけています(発表から出荷開始までの期間)。その間、細部まできっちりと磨き抜いたそうです。触るとハード的にはすこぶる完成度が高いのがすぐわかります。そうですね。クルマでいうと、あるシリーズの最終進化型でデビューしたようなものです。よく考えられている上に、欠点がありません。実に優れた器といえます。

 しかし、その分高価格。本体一台 30万円と、基本パックを含む月額サービスに1万2980円/月かかります。ただこれ見方にもよります。まず必需品としては、高すぎます。が、ペットとしてみるとどうでしょうか? 30万円はちょうどチワワ一匹分ですし、月々のサービス料は餌台、保険代に当たります。人工生命を買ったと思うと、リーズナブルな値段でもあります。

 とはいうものの、知名度、すぐできることに対し、高額であるのも事実です。林代表によると、本体販売で十分な利はでていないとのことでした。

カスタマイズ・ビジネス

 ところが、この手のモノにつきものなのがカスタマイズ・ビジネスです。これは、自分が心を寄せるモノを、他と違わせたい、自分好みにしたいという人間的な欲求です。いい例がスマートホンケース。どんなに、スマートホンが丈夫になってもケースビジネスはなくなりません。一つの機種にこれでもかというほど種類があります。

 ロボットはスマートホン以上です。カスタマイズで一番多いのは「服」です。2017年に、ロボホン一周年記念イベントを取材しましたが、イベントに持ってきてくれたロボホンは一台たりと同じものはありませんでした。メーカー純正のカスタムシールから始まり、手縫いの服まで、実に様々。

 LOVOTも同じことがいえます。ただLOVOTの服は手先まであるのがスタンダードです。しかも、LOVOTは手の上げ下げなどしますので、ストレッチ素材でないと作りにくいのです。素材指定もできませんので、メーカー側で用意することになります。しかも、メーカーサイドも心得たもので、日本の四季イベントに対して、コスチュームを用意したのです。実際、私も、毎月の様に新しい服が出ましたという通知を受け取りました。でも、これ、ユーザーとしては、嬉しいことです。数種からある服の中から、好みのものを言われると無理やり選ぶことになりますが、ずらっと並べられると選び甲斐もありますし、どうすればもっと楽しくできるかということも考えます。

 コロナ禍においてもLOVOTの服関係はフル生産だったそうです。別の言い方をすると、カスタマイズ化は、顧客満足度を高める方法です。学習AIにより、個性はだんだん強くなります。目と声は、10億通りの中から自分で設定できます。このため、同じボディーと言えども、中身は違うのです。が、それは我が子だから分かる様なもの。それを誰にも分かる様にしたのが、服によるビジュアルかです。満足度が高いと、ゆっくりですが、口コミで拡がります。ベンチャーにとって、重要な後押しでもあります。


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