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2021年4月21日

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馬場未織 (ばば・みおり)

二拠点居住ライター

日本女子大学大学院修了後、建築設計事務所勤務を経て建築ライターに。2007年から平日は東京、週末は千葉県南房総市の里山の二地域で居住する。田舎暮らしなどをテーマに執筆活動を展開。南房総の里山と都市に暮らす人をつなぐNPO法人南房総リパブリックの理事長も務める。著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

(vkp-australia/gettyimages)

 新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークやワーケーションが一般化される中、連動するように二拠点生活が注目され出した。「わたしも二拠点やってみようかなー」と気軽に言う人が少なくない世の中になっている。

 ただ、よく考えれば二拠点生活は本来この時流とは関係なく実現可能だったもの。仕事場の環境に心地よさを求めたり、仕事後すぐに遊べるなどという意味では意味では価値高いが、それよりも「あまりにマイナーなライフスタイルだと手をつけないが、メジャーになってくると安心して始めやすくなる」という効果の方が大きいかもしれない。

 初動がどうであれその後は暮らしが続き、喜びも苦労も続く。それをきちんと理解することで、「自宅時間を持て余して飼い始めたペットが飼いきれなくなった」といったような残念な顛末を回避することができる。

二拠点生活を一時の思いやブームにさせないために必要な心得3カ条をここに示しておきたい。

第1条:2拠点目は完璧な家を目指さない

 1拠点目と違って必要のない家だからこそ、趣味的に自分のこだわりを発揮できる。2拠点目を別荘のように考えると、宝飾品と同様に自分の物欲を満たし、誰かを呼んで素敵だと言われる「夢の拠点」を手に入れたいと思うだろう。

 ただそれは、ストレスと表裏一体。仮に都市の住まいと同じ精度を求めようとすれば、気になるところだらけかもしれない。不在時にたまる湿気、どこかから必ず入ってしまう虫、容赦なく伸びる雑草、中古物件であれば傷みもある。

 都市で暮らす住まいだと、ちょっとした欠陥が見つかっても大騒ぎになる。雨漏りなどもってのほかだ。家というのは完璧なシェルターでなければならない、というのが都市住宅的感覚だからだ。ところが、そうしたトラブルはまあまあな頻度で起こり得る。天井裏に動物が入ってガサガサ音がする時、悪い想像が肥大して夜も眠れないほど思い悩むと身が持たない。

 家のトラブルについて気軽に相談できる友人を持ったり、簡単なことであればDIYで直せるくらいだと、暮らしはぐっと気楽になる。不安やストレスは、解決の道筋が見えないところに起こるからだ。

 不具合は自分なりに対処したり見逃したりしながら都市生活との違いを味わい、「そもそも家ってなんだろうね」と考える機会が持てれば、二拠点生活ならではの学びになるだろう。

第2条:地域の仕事を労働の搾取だと思わない

 別荘地に持つ家と違って、普通の暮らしの場である集落などにある空き家での二拠点生活では、毎日住んでいなくてもエリアの「準会員」的な扱いとなる。組合費などの徴収があったり、公共空間の草刈りやお祭りなど地域の作業への参加を促されることもある。

 二拠点生活者は週末を思いっきり自分のために使いたい人も少なくないため、そうした作業を負担に感じる場合もある。また、週末しかいないのに組合費を支払うことに対する抵抗感を持つこともありそうだ。

 これらは事前にしっかりと地区の区長らと話をするのがいい。説明を理解しないままでいると強引に集金されたという被害意識が宿ったり、使いもしない場所の草刈りを一緒にしなければならないなんて理不尽だという不愉快さが残る。こうした軋轢があると、地域での暮らしがまったく楽しくなくなる。家の外に出れば地域の人たちと顔を合わせるわけで、そこで「会いたくない人」がいるとお互いに生活しづらい。

 二拠点生活をどう楽しむか、というのは個々それぞれだ。こちらの生活を理解してもらい免除される部分を決めるのもいい。また、地域で必要な作業や費用の必要性についてしっかりと理解することで参加意識に変化が出てくる。とりわけ地域仕事はいろいろな会話をしたり地域を知る楽しい時間と捉えることもできる。共同作業を「プライベートの時間の搾取」と思うマインドより、「暮らしは自分たちでつくる」というマインドの方が結果的に本人の二拠点生活の満足感が高まる気がする。

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