霧はいつか晴れる
朝岡が珍しいという、近くの北上川の「移流霧(いりゅうぎり)」を観ようと、朝岡とモネ、サヤカらが川面の近くに日の出前にでかける。雲のなかにいるような錯覚に陥る美しい景色のなかに、陽が昇ってくる。モネはその美しさに一瞬うたれて、目を輝かせるが、たちまち涙目になる。同行した者たちは、心配げにみやる。
モネはいう。
「私の地元の気仙沼の冬にも『毛嵐(けあらし)』といって、これとよく似た霧が港に広がるんです。私、毛嵐を観るのが、小さい頃からとても好きで、海からのぼる朝日もとてもすきでした」
そう語ったモネの目からとめどなく涙が流れる。
シーンは、高校生時代のモネが高台から何者かを観る、それは明らかに津波の飲まれる地元の風景だろう。
「でも、あの日、私、なにもできなかった」
天気予報士の朝岡(西島)は、そんなモネにこう語りかける。
「霧がいつか晴れますよ」
一方のモネの妹・未知(蒔田)は、水産高校で学んでいて、その学校のカリキュラムがテレビで取り上げられたときは、インタビューを受けて「将来は高校で学んだことを活かして、食品の研究者になりたい」と語った。モネとは好対照で、自分が進むべき道をもっている。
未知(蒔田)は、モネの同級生で漁師になった、及川亮(永瀬廉)に淡い恋心を抱いている。「亮ちゃんさん」とモネが亮を呼んでいる「亮ちゃん」に「さん」をつけるほど、話しかけるだけであがってしまう。話ができたあとに、帰り道では「やった!」のポーズである。
今回のテレビ小説の脚本は、「透明なゆりかご」の安達奈緒子である。「透明な」がそうであったように、珠玉の言葉がちりばめられている。
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