田部康喜のTV読本

2021年5月29日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

霧はいつか晴れる

 朝岡が珍しいという、近くの北上川の「移流霧(いりゅうぎり)」を観ようと、朝岡とモネ、サヤカらが川面の近くに日の出前にでかける。雲のなかにいるような錯覚に陥る美しい景色のなかに、陽が昇ってくる。モネはその美しさに一瞬うたれて、目を輝かせるが、たちまち涙目になる。同行した者たちは、心配げにみやる。 

 モネはいう。

 「私の地元の気仙沼の冬にも『毛嵐(けあらし)』といって、これとよく似た霧が港に広がるんです。私、毛嵐を観るのが、小さい頃からとても好きで、海からのぼる朝日もとてもすきでした」

 そう語ったモネの目からとめどなく涙が流れる。

 シーンは、高校生時代のモネが高台から何者かを観る、それは明らかに津波の飲まれる地元の風景だろう。

 「でも、あの日、私、なにもできなかった」

 天気予報士の朝岡(西島)は、そんなモネにこう語りかける。

 「霧がいつか晴れますよ」

 一方のモネの妹・未知(蒔田)は、水産高校で学んでいて、その学校のカリキュラムがテレビで取り上げられたときは、インタビューを受けて「将来は高校で学んだことを活かして、食品の研究者になりたい」と語った。モネとは好対照で、自分が進むべき道をもっている。

 未知(蒔田)は、モネの同級生で漁師になった、及川亮(永瀬廉)に淡い恋心を抱いている。「亮ちゃんさん」とモネが亮を呼んでいる「亮ちゃん」に「さん」をつけるほど、話しかけるだけであがってしまう。話ができたあとに、帰り道では「やった!」のポーズである。

 今回のテレビ小説の脚本は、「透明なゆりかご」の安達奈緒子である。「透明な」がそうであったように、珠玉の言葉がちりばめられている。

  
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