2024年11月28日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月30日

 米ブルッキングス研究所上席研究員のマイケル・オハンロンが、フォーリン・ポリシー誌のウェブサイトに9月18日付で掲載された論説において、現在、ペンタゴンが検討しているエアー・シー・バトルの名称をエアー・シー・オペレーションに変える方が中国を刺激しないし、戦闘のみに力点を置いた構想と見られることを避ける上でも望ましい、と論じています。

 すなわち、ペンタゴン、特に空軍と海軍では現在、エアー・シー・バトル構想が検討されている。日本などの周辺海域での米軍などの海洋へのアクセス維持のためのドクトリンだ。これは技術の進歩を反映すると同時に、海洋支配をねらっている中国を念頭に置いている。

 エアー・シー・バトルの考え方は理解できるし、望ましい。中国は米が西太平洋を米の湖のように扱うのを阻止するために潜水艦やミサイルを増強している。我々はそれで驚くべきではないが、中国もそれへの我々の反応を理解すべきだ。西太平洋へのアクセス維持は、米にとり、同盟維持のためにも重要だ。その上、エアー・シー・バトルは新兵器システムの調達ではないので、それほど挑発的でもない。予算削減からアジア・太平洋での能力維持を図るのが主眼で、新しい攻撃オプションを作ろうという話ではない。

 ただエアー・シー・バトル概念が米の防衛計画で重要性を増す中で、もっと正確で挑発的でない名前が必要だ。アジアでは、表現は重要だ。最近アジア地域を旅行した際に、アジアへのリバランスとエアー・シー・バトルは中国封じ込めの一環であるとの不満を多く聞いた。

 中国は敵ではないし、ソ連のように封じ込めの対象でもないので、名前を変え、エアー・シー・オペレーションとするのがよい。戦争計画も含むが、平時でのプレゼンス維持、抑止、危機対応などを含み、中国との協力さえも含む概念にすればよい。エアー・シー・オペレーションは中国の台頭に対処するものだが、紛争への準備より地域的安定の強化を目的とする、と説明できる。

 あと二つ、変更すべき点がある。

 第一は、エアー・シー・オペレーションは、戦争の際に中国本土の目標に対する先制攻撃や初期段階での攻撃を予定していると解釈されるべきではないということだ。中国本土が聖域化すると、中国沿岸近くの海洋や空へのアクセス確保はできないが、同時に本土の目標への攻撃は全面戦争へのエスカレーションを惹き起こす。この危険は大きい。エスカレーションの危険を避けつつ米の利益を守る間接的あるいは非対称的な方法で対応するやり方を見つけるべきだ。

 第二に、エアー・シー・オペレーションは空軍と海軍に限らないものにすべきだ。陸軍と海兵隊も重要な貢献をなし得る。海兵隊にアジア太平洋地域での空軍や海軍の基地などを守ってもらうことが考えられる。同盟国などの領土を守るための軍の配置が敵対的になるかもしれない中国に対する最も賢明な長期的対応かもしれない。


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