世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年6月23日

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Igor Vershinsky / iStock / Getty Images Plus

 バイデン米大統領は、本年1月の就任以来、初めての外国訪問先としてヨーロッパを選んだ。それも、同盟諸国重視の日程である。まずG7サミットの議長であるジョンソン英首相と米英首脳会談を行った上で、G7サミットに臨み、その後、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議に出席する。欧州の同盟諸国と軍事的関係を強化しつつ、同時に、経済的には、EUの首脳とも会談する。このように、民主主義諸国と様々な分野で結束を確実にした上で、6月16日に、就任以来、初めての対面での米ロ首脳会談をジュネーブで行う予定である。

 バイデン米大統領は、6月9日にヨーロッパに出発する前に、6月6日付のワシントン・ポスト紙に、「私のヨーロッパへの旅行は米国が世界の民主主義国を再結集するものである」との論説を寄稿している。

 このバイデン大統領の寄稿は、バイデン大統領の考え方を率直に表明したものであり、熟読吟味する価値がある。バイデンはこの論説の表題にある通り、民主主義諸国を再結集させる必要を強調している。中国やロシアに対抗して、民主主義諸国連合を作るとの方向性については、地政学的に反中であるベトナムを民主主義ではないからとの理由でこの連合から排除するのは好ましくないとのもっともな意見がある。基本的には民主主義連合でよいが、ベトナムのような中国の圧力を南シナ海で直接受けている国にはそれなりの配慮をすべきであると考える。イデオロギーとジオポリティクス(地政学)は時折違う行動を求めるが、地政学的考慮も軽視してはならない。

 バイデン大統領の同盟重視の考え方が、この寄稿にははっきりと出ている。トランプ前大統領は、米国の世界での立場に大きな損傷を与えたと考えられる。その第1は、同盟国との関係への配慮不足であった。中ロ両国と米国との大きな違いは、米国が強固な同盟関係を持っているが、中ロ両国にはそれがないことである。トランプはその米国の強みを理解せず、同盟国に圧力を加える一方、ロシアのプーチンには説明が難しい気づかいをした。対中姿勢ではきちんとしていた。バイデン大統領は前任者のトランプとは異なり、同盟国重視であり、これは日本にとっても良いことである。NATO諸国と米国との関係がぎくしゃくすることも、これからは少なくなるだろう。

 新技術について、それが今後、世界を変革していくとの認識は正しいだろう。これについて、民主主義諸国がその価値観を持って主導権をとって規則作りをしていくとの意気込みは、日本も共有していくことが大切である。顔認証技術が国内での国民の監視に使われ、権威主義政権がその力をますます強めるようなことは排除していく努力をしなければならない。

 今回、英国コーンウォールでのG7サミットの首脳声明では、「台湾」にも言及がなされた。アジアの重要な平和・安定の要となっている台湾情勢を、国際社会で注視して行く姿勢が示されたことは良かったと思う。

 いずれにせよ、G7サミットが、本来の形になってきていること、今後その影響力が大きくなりそうであることは、日本にとりいいことである。

  
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