世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年6月28日

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 6月7日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、Demetri Sevastopulo同紙ワシントン支局長、Sam Fleming同紙ブリュッセル支局長及び同紙EU外交特派員のMichael Peelが連名で記事を寄せ、中国に対するEUの立場は米国と差があるが、バイデン政権は中国政策でEUと協調をしたいと考えている、と述べている。

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 この記事は、丁度、バイデン大統領が、一月の大統領就任後、初の外遊先としての欧州に出発する6月9日の直前に出されたものである。バイデンの訪欧中の日程としては、英国でのG7サミットへの出席の他、NATO首脳会議及び米EU首脳会談があった。従来は、NATOの首脳会議での主要議題は、対ロシア政策であった。もちろん、ジュネーブでの米ロ首脳会談を前に、NATO内での結束を固めておくことは、プーチン大統領との会談を、米国側に有利に進めるために必要なことである。が、今回、バイデン政権の最大の外交課題は、世界各地さらに宇宙にまで勢力を拡大する中国であった。

 EUと米国の対中政策はこれまで大きく異なってきた。米国は、トランプ政権の時代には、トランプが米中関係正常化後の40年間で最も対決的な中国政策を実施した。

 バイデン大統領はトランプほど極端ではないにせよ、4月28日の議会での演説で、「21世紀を勝ち抜くために中国やその他の国と競争している」と述べ、中国に対抗する姿勢を鮮明にしている。

 一方で、EUは特に基軸国ドイツのメルケル首相が中国との通商を重視していたこともあり、中国との協調路線を進んだ。2020年12月30日、EUの首脳が中国の首脳とテレビ会談を行い、EU・中国の包括的投資協定への大筋合意を発表したのは両者の協調を象徴するものであった。

 しかし最近では、EUの対中態度の硬化が目立つ。それを象徴するのが、3月22日のEU外相理事会で、中国のウイグル族への不当な扱いが人権侵害に当たるとして中国の当局者らへの制裁を採択したことである。中国に対する制裁は、天安門事件以来30年ぶりのことであった。これに対して、中国外務省が対中制裁に関わる委員会等に所属するEU議会関係者などに報復的に制裁を課すと発表した。すると5月20日、EU議会は前出のEU・中国投資協定の批准手続きの凍結決議を採択した。

 さらに5月6日、G7外相の共同声明は、中国の覇権主義的行動や新疆ウイグル自治区の人権問題などに対する懸念の表明など、中国を強くけん制する内容となった。G7には欧州の最有力国が入っている。したがって中国を強くけん制する内容は欧州の見方の反映でもある。

 しばらく前までのEUと中国の協調路線が嘘のような展開である。米高官が欧州の中国観には「完全な様変わり」があったと述べたのも、むべなるかなである。勿論欧州の中国観が変わったと言っても、欧州の中には様々な見方があり、必ずしも中国観で一枚岩ではないだろう。その上中国は欧州にとって重要な通商の相手国である。欧州の中国観が「完全な」様変わりと言えるかどうかは疑わしい面もある。

 しかし変わったことは間違いない。従ってバイデンが中国について欧州に米国と協調するよう促すことはそんなに困難ではなくなったと言えるのではないだろうか。

  
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