2022年12月5日(月)

World Energy Watch

2021年7月19日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

電動化だけでは難しい

 自動車からのCO2削減策として、電源の非炭素化を前提としたEV導入について語られることが多いが、EV導入が進む欧州でもEVだけでは当面の脱炭素実現にはつながらないと考えられている。EUでは独仏など主要国が、コロナ禍からの復興予算を脱炭素と自動車産業支援のためEV購入補助金に投入しEVの累積台数は増えたが(図-3)、EC提案により2035年に排出量ゼロの自動車販売が義務化されるにせよ、全ての車両が置き換わるには時間が掛かるので、当面バイオ燃料が必要と認識されている。

 ECは、2030年に3000万台のEVを導入することを目標としている。欧州自動車工業会によると、2020年にEUで販売された乗用車の台数はコロナ禍により大きな落ち込みとなったが、BEVとPHEVの販売台数は合わせて100万台を超えた(図-4)。しかし、仮に販売増が続いても、EVだけでは大きなCO2削減は達成されない。EU内には2億4000万台以上の乗用車があり、EUでの販売後の乗用車の経過年数が平均11年であることから、2億台以上の内燃機関自動車が2030年にも走っていることは確実だからだ。

 

 欧州自動車工業会は、EV3000万台達成が難しいとみているが、その理由の一つは充電設備数が不十分なことだ。2030年時点でEU内には22万4000基の充電所があるが、ECは2030年には300万基必要としている。ECの発表では、EV用充電設備を60kmに1基、水素ステーションを150kmに1基設置する計画だが、10年間で10倍以上にすることは難しいと欧州自動車工業会は見ている。

 さらに、問題はEU内でのEV格差だ。特定の国では導入量は急増したが、1人当たり所得と導入台数には明らかな相関関係がある。EU全域では2030年までに3000万台のEVが販売されることは難しそうだ。2035年に内燃機関自動車の販売が禁止になれば、1人当たりGDPの低い国では国民が乗用車購入に苦しむことになりそうだが、ECはEV価格がそれまでに下落すると楽観的に見ている。価格が下落しなければ、自動車の買い替えが遅くなり、排出削減にも産業にも影響が出ることになるだろう。

 累積台数に占めるEVシェアが高い国は、ドイツ、オランダ、スウェーデンなどだ。EU外ではノルウェーでのEVシェアが極めて高く、2020年BEVの全乗用車販売に占めるシェアが54%、PHEVが20%に達した。産油国にもかかわらず世界でも有数の高ガソリン価格の国なのでEV導入が進む背景がある。最新のガソリン価格は1リットル当たり220円を超えている。EV導入比率が高い国と低い国を比較すると、一人当たり所得とEV比率に相関関係があることが自明だ(表-1)。途上国で自動車台数が増えることを考えると、電動化だけで世界のCO2排出量を削減することは難しいだろう。

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