米で入国できなかった731関係者も
ことほどさように日本では認識の低いこの問題、国際的にはひとりサイモン・ウィーゼンタール・センターにとどまらず、きわめて厳しい姿勢で非難、断罪するのが常だ。
イスラエルはいまでもナチス戦争犯罪人を捜査しているし、アメリカもこうした人たちの入国を拒否するなど〝制裁〟をつづけている。
実のところ、対象はナチス関係者にとどまらず、日本人にも及んでいる。
筆者がワシントンに勤務していた1996年、米司法省は、日本人の〝戦争犯罪人〟について入国を拒否、日本政府にに捜査資料の提供を要請したことがある。
司法省の戦争犯罪特別捜査部はそれまで、ドイツ、オーストリア国籍の約6000人を入国禁止処分にしていたが、これに旧日本陸軍で細菌研究、人体実験などを行っていた旧731部隊、慰安婦の動員に関係した日本人ら数十人を加えた。実際に何人かの日本人が、米国の空港から強制送還されたケースがあった。
当時、筆者は特別捜査部の責任者にインタビュー、戦後70年以上経て、訴追されなかった軍関係者らを処分する目的などについて質問した。
先方は、「ドイツ、オーストリア関係の捜査がおおむね終了したので、以前から着手したいと思っていた日本関係の捜査を始めた」「政治的な意図はない。真実を追及するのが目的だ」ーなどと説明した。日本政府は「対象者はいずれも訴追を免れて普通の市民に戻っている」ことを理由に捜査協力を拒否、一時両国関係がぎくしゃくする原因のひとつになりかけた。
開き直りか? 事務総長発言
解任された演出担当の小林氏自身は事実関係を認めているようだ。
組織委はやはり不手際とのそしりを免れえないだろう。
解任を受けて橋本聖子会長とともに記者会見した組織委の武藤敏郎事務総長は、「小山田さんの件が発覚した後、関係者の調査をした。昔の行動まで調べるのは実際問題として難しい」と釈明した。
しかし、「五輪、パラリンピックの開閉会式で小林氏による制作、演出が決まった時、一部のファンの間では『ユダヤ人大量虐殺のコントをしていた人を選ぶなんて』と話題になっていました。調べればすぐ出てくるのに…」(AERAdot.)という報道もある。
事実とすれば、事務総長の発言は開き直りといわれてもやむをえまい。
橋本会長は、「ご心配、ご迷惑をお掛けしている。後手後手に回っている印象で反省している。最善の力を尽くしていく」と苦しい表情を隠さなかった。
トラブル続きの大会、同情に堪えないが、これ以上の失態は許されないと心すべきだろう。
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