田部康喜のTV読本

2021年7月24日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Vasyl Dolmatov/gettyimages)

 「#家族募集します」(金曜よる10時、次回は東京2020のため8月13日放送)は、若手ながら個性的な演技の「性格俳優」の多彩さを秘めた、仲野太賀が木村文乃と岸井ゆきの、というこれまた演技派の女優を相手にして、笑わせ、そしてちょっぴりしんみりさせる、新しい形の「ホームドラマ」の傑作である。

 お好み焼き屋の「にじや」の住み込み店員である、小山内蒼介(仲野太賀)は、学童の同級生で小さな絵本出版社に勤める、赤城俊平(重岡大毅)と再会する。赤城は、妻で絵本作家のみどり(山本美月)を欧州の事故で亡くしたばかりで、息子の陽(はる・5歳・佐藤遙灯)を育てるシングルファーザーである。陽には、母親が死んだことを話せないでいる。

 蒼介(仲野太賀)は「にじや」をシェアハウスにするといいだす。さっそく、SNSで「#家族募集します」を発信する。俊平(重岡大毅)も「家族」になるように誘う。

 小学校教諭のシングルマザー・桃田礼(木村文乃)は、帰宅したものの学校に呼び出され、娘の雫(しずく・5歳・宮崎莉里沙)の預け先に困って、蒼介(仲野)の「#家族募集します」にすがって、雫を預けたことから巻き込まれていく。

 「#2」(7月16日)に至って、ギター・ケースを背負った、横瀬めいく(岸井よしの)が息子の大地(だいち・6歳・三浦綺羅)を連れて、「にじや」に転がり込んでくる。「#家族募集します」を見たというのである。

 シングルマザーのめいく(岸井)は、シンガーソング・ライターを目指しながらも、バンドに加わっても続かず、生活のためのバイトも続かない。「このあたりで、仕事決まるまで、家賃は待ってくれる?」と、蒼介にいってあきれ返られる。

 蒼介がめいく(岸井)を毛嫌いするようになったのは、せっかくのお好み焼きにマヨネーズをたっぷりとかけたうえに、携帯していたタバスコまでかけて食べる様子をみたからだった。

 めいく(岸井)は昼間、ギター・ケースを肩にかけて、「にじや」を出ていったきり、夜になっても帰ってこない。蒼介(仲野)は、1時間ごとに俊介(重岡)と、礼(木村)にメッセージを送る。「子どもを置いて、出ていったに違いない」と。

 「にじや」にシェアハウスに、礼(木村)と俊平(重岡)の親子、そして新たに登場した、めいく(岸井)の親子が同居するようになるのは、次回以降になる。

 ドラマは毎回、それぞれのシングルマザーとファーザー、そして、発案者の蒼介が抱える「家族とはなにか」の問いを解きほぐしていく。

 なぜ、蒼介は神経質にめいくを疑うのか。めいくが帰ってこないと、なぜ決めつけるのか、礼が問い詰めると、蒼介はぽつりぽつりと話し始めた。

 「あいつ、俺の母ちゃんに似てるんだよ。おやじが家を出て行って、かあちゃんは明るくふるまっていた。ところがある日、突然帰ってこなかった。理由はいまだにわからない。そのあとで、親戚に預けられた。あいつが帰ってきたら、ガツンといってやる」と。

 礼(木村)も俊平(重岡)も「ガツンと」と怒る経験はないという。「アンガー・マネジメント」の礼は、怒りがこみあげたら6つ数えるという。そうすると、怒りが収まると。

 俊平は、息子の陽が食事中にむずがって、テーブルの上の食器を床に叩き落としたときのことを話し出す。亡くなった妻のみどり(山本)が怒ると思ったら、いきなり陽を抱きしめたというのである。

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