使えない上司・使えない部下

2021年5月21日

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 今回は、一般社団法人日本シングルマザー支援協会の代表理事の江成道子さんに取材を試みた。同協会はシングルマザーの支援をする団体。2013年に設立された。主に「お金(収入)を稼ぐ力を養う」「共感しあえるコミュニティ」「再婚という幸せ」の3つを実現することに重きを置く活動をする。現在、会員は約8000人。

 離別(離婚)や死別で夫と別れ、ひとりで生きるシングルマザーが大半を占める。様ざまな業界の会社や団体で正社員、非正規社員(パートや派遣、契約社員)として働く人が多い。

 江成さんにとって、「使えない上司、部下」とは…。

イメージ写真(kokoroyuki/gettyimages)

シングルマザーが企業の寿命を伸ばし、未来を構築する

 コロナウィルスの感染が拡大し、業績が悪化し、リストラをする会社が増えています。シングルマザーの中には、その影響が直撃した人がいます。特に目立つのはパートやアルバイト、契約、派遣などの非正規の方です。

 企業の側からすると、非正規は経営難の時に労働契約を解除できることを前提とした存在なのです。だからこそ、私たちシングルマザー協会は「正社員になることを目指しましょう」と会員の皆さんや相談に来る方に呼びかけています。

 シングルマザーになる場合は、通常は世帯主になるのです。夫がいないのですから、家計全体を担うことになります。ところが、主婦的な感覚のままで例えば、パートやアルバイトをして月に5万~15万円の収入の人がいます。いろいろと大変なのはわかるのですが、この収入の状態が長く続くと生活が苦しくなるでしょう。最悪の場合は、貧困の状態に陥るのかもしれません。

 パートやアルバイトを長く続けても、キャリアの形成につながらない場合があるのです。例えば35歳で離婚し、パートとして10年働いて45歳になったとします。そこからさらに学費や養育費がかさむと思います。パートで月額5万~15万円の収入のままでは、そのお金を工面することができないかもしれません。

 40代半ばになって、正社員になろうとしても遅い場合があります。会社によっては、パートの10年間の経験を正社員の登用試験や中途採用試験で認めないことがあるのです。40代半ばでパートのままでは、35歳の時よりも厳しい現実に直面するかもしれません。

 シングルマザーの中には、子どもの環境を離婚する前と比べてできるだけ変えたくないと願う人がいます。お子さんと一緒にいたい思いはわからないでもないのですが、事実に即して考えると、離婚した場合は子どもの環境が変わることがあるのです。例えば、お母さんがお父さんのように働くことが必要になり、留守番をする機会が増えます。

 お母さんが働くと、実は子どもとの関係がよくなったり、強くなる場合があるのです。留守番をきちんとするようになり、家庭を守らなきゃいけないと責任感を持ち始めます。夫婦がそろっていた家庭の子よりも意識の成長が早く、責任感が強くなります。成人後もお母さんを大切にして、立派で生き生きとした大人になっていくケースもあるのです。

 私はシングルマザーが生活力、経済力を今以上に持ち、強くなることが必要だと思っています。それが、必ず企業の寿命を伸ばし、未来を構築します。社会をよくしていくことにもなるのです。まずは、正社員を目指してほしい。経済力を持つと、自由の選択肢が増えるのです。昨年からのコロナウィルスの騒動で、シングルマザーは正社員として安定した収入を得る環境を早く作る必要があるとあらためて思います。

 離婚した以上、かつての夫の経済と女性の経済は直接的な関係がなくなるのです。戸籍のうえでも縁が切れて、他人になるのですから…。養育費は離婚時やその後の話し合いによって変わるのかもしれません。ただし、それはあくまで子どものもの。大人である以上、双方とも自分の生活は自分で担うもの。それが当たり前なのですが、シングルマザーの中には意外と認識ができていない人がいます。

 私たちは、企業には「こうするとシングルマザーが働きやすくなるのではないですか」と提案する時もあります。シングルマザーの側も意識を変える必要があるのです。「企業にすべてのリスクを負ってください」とは思っていません。そうでないと、双方のミスマッチの連続になりえます。ついには企業が「シングルマザーは採用しないほうがいい」と考えてしまいかねない。私たちは、企業に貢献できる女性を作っていきたいのです。

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