2022年6月30日(木)

MANGAの道は世界に通ず

2021年9月23日

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なぜ上層部は無能なのか

 さて、よく戦時中の話として、「無策な軍部・上層部が無謀な作戦を立て、現場に苦労が押し続けられた」ということがいわれる。これはまさにその通りであり、この作品を見てもその様子が分かりやすく描かれている。実はこれこそ、上述したような日本人のメンタリティから来ているものだ。集団主義といわれる日本人は実はそうでなく、「集団で動くとなると非常に苦手」なのが真実だ。

 個人主義であるがゆえ、他人に対して責任を取りたくない。「責任を取りたくない」からこそ、自分に責任のない「決められたルール」「上の決めたこと」には従う。日本人がお上の言うことには従うのはこうした理由だ。自分で意見したり意思決定すると、自ら責任を取る必要があるが、外部に理由を求めればいつまでも、従っただけの被害者でいられるわけだ。要するに、従っていれば楽だから従うのだ。

 だからこそ、自ら責任を取って「本当に正しいこと」を実行しようというリーダーがいない。これを言ったらマズいんでないか…? という「空気」を優先し、全体の慣性モーメントに従ってしまう。頭では、どこかおかしいのではと思っていても。

 なお、こうした日本人のメンタリティについて興味のある方に、更に一つ付け加えたい。自らの主張や意見がなく、外部に理由を求めるこの気質については、『日本辺境論』(内田樹、新潮新書)でより深く語られている。歴史上、近世まで常に中国が覇権国家として近くにあり、そちらを見上げていた成り立ちから、そもそも日本人にはアイデンティティが乏しく、「どこかにある正しいもの」にすがって生きている、ということを説いているのだ。

 もっとも、だからこそ日本人はまっさらで、外部からの情報の吸収力・学習力が高いことも語られている。明治維新後の追いつき、二次大戦後の大復活、などは最たる例だろう。興味のある方にはぜひご一読いただきたい。

 閑話休題。このようにして、日本人を動かすにはエクスキュースがいるのだ。不動産の例では、エクスキュースの効く「ルールだから」「契約書がこうだから」というもので、それを盾にして融通の効かない家主の例を挙げた。逆にだからこそ、日本人を動かすには別のエクスキュースを用意してあげることが必要、エクスキュースさえ用意すれば日本人は動きやすい、といえるだろう(最も分かりやすいのは「上がこう言ってます」ということだが)。コロナ禍の対策において、大衆は好き勝手に文句を言ったが、いざお上から「要請」が出されると、みな暴動の一つも起こさず素直に従っていたのは記憶に新しい(さすがに2021年初夏の現在、長引きすぎて効果が薄れている状況ではある)。

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