2022年11月28日(月)

MANGAの道は世界に通ず

2021年9月23日

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ネット上で集団リンチが発生する理由

 こうしたことの最高潮が、第8〜10巻のエピソードに表れている。残留日本兵が隠れ家に立て篭もり1年以上が経ち、もはや時は1946年秋を迎えていた。さすがに状況や様子を顧みて、「もう戦争は終わっているのではないか?」と主人公たちは疑い始めるが、ペリリュー島の上層部はそれを認めようとしない。

 そして一悶着あった上、第70話「狂熱」において、いよいよ主人公たちは脱走し、米軍への投降を図ろうとする。ここで、一緒に戦火を潜り抜けた仲間たちが、「あいつらは脱走兵だ!」ということで、主人公たちを撃ち殺そうとするのだ。脱走兵は処刑するというのが「ルール」だからだ。

 上が決めたルールをもとに、味方を罰する。「自分で正しいことを決めた主人公たち」が、この世界では悪になってしまった。このようなエクスキュースがあれば、同胞・味方を断罪して人はいくらでも残酷になれるという、それが象徴的に分かるエピソードであった。

 個人主義であるがゆえに、人の決めたルールに従い責任を逃れる。自分の頭で考えず、「上のお達し」に無垢に従い、従わない下は容赦なく切り捨てる。こうした負の連鎖で、間違った方向にどんどん進み、後戻りのできないところまで加速してしまったのが太平洋戦争であり、日本型システムというわけだ。当作品では、他にも随所にそのようなエピソードが散りばめられている。

 現代でも、ニュースで報道された「悪人」が、ネット上で無数からの「炎上」なる集団リンチを受けるのもまさにそれだ。メディアで「悪い」とされたエクスキュースがあるからこそ、叩く自分には非がなく、いくらでも残酷になれてしまう。用意された正義のもとでは、自分は責任を取る必要がなく、それを盾に無尽蔵に人のことをぶっ叩いてしまうという、偽りの正義感にはぜひ気をつけていきたいものだ。

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