ここ数年間、米国政府は台湾との間の交流・接触のレベルを上げてきており、米当局者と台湾側カウンターパートとの接触制限の緩和や米軍用機の台湾への立ち寄りなどが行われた。しかし、同時に、米国としては「一つの中国」の原則の解釈をめぐり、「戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)」を放棄することまでは考えていないと言って良い。
日本や欧州も巻き込んだパワーゲーム
米国としては、台湾海峡の「現状」(状況が絶えず変化している中で、この言葉が如何に欺瞞的であろうとも)を変更することなく、両岸の「平和的解決」と「意味ある対話」を勧奨しつづけていく構えを見せている、というのは Taipei Times の指摘の通りである。蔡英文は最近も「圧力に屈することなく、支持を得ながらも暴走せず」、現状維持を貫くと述べている。
なお、米国家安全保障会議インド太平洋担当調整官のカート・キャンベルが本年5月に米政府が台湾に対する政策を変更すれば、「重大なマイナス面(some significant downsides)」が生じるだろう、と述べたことは台湾人の間ではよく知られている。
「一つの中国」の原則を順守していても米国は、台湾との「非公式な」関係を拡張する数多くの手段を持っており、台湾への確固たるコミットメントを示したいのであれば、より多くの現実的なことをなしうる、という本社説の指摘はそのとおりだろう。本社説は、台湾、中国、米国の関係は、いまや、これら三者だけの問題ではなく、日本、豪州、そして台湾との関係発展に熱心な欧州諸国など、多くの国々を巻き込んだ形のパワーゲームになっている、という。
2期目を3年残す蔡英文にとり、重要な任務の一つは、台湾としては、様々な国との関係を強化し、それにより、いかに制約があろうとも、出来るだけ多くの場所において台湾の影響力を拡大できるようにし続けることだ、と述べ、Taipei Timesは社説をむすんでいる。このように、本社説は、最近のアフガン情勢を踏まえ、改めて世界に占める台湾の位置を見つめなおすものとなっている。
実際、台湾の新型コロナウイルスへの対処等により、日本を含む多くの国々が台湾の世界保健機関(WHO)への参加を支持した(ただし、中国の反対によりいまだに台湾のオブザーバー参加さえ許されていない)。また、欧州からは、チェコの上院議長一行が台湾を訪問したり、リトアニアでは、Taiwanという呼名で代表事務所が開設されたりしている。
東京オリンピック・パラリンピック2020でも、台湾は、「たいわん」と呼ばれて選手団が入場した。また、それ以上に、台湾の国際的地位を高めたのは、半導体技術である。5Gさらには6Gまで視野に入れた通信技術において不可欠な技術を台湾が握っていることである。ただ、巨大化した中国がアフガン情勢においても大きな影響力を占める中、台湾がいかに国際的存在感を高めて行かれるかは、今後も課題となっていくだろう。その中で、日本の果たすべき役割は少なくない。