また女性管理職社員を対象にしたメンター制度は、昨年度に試行的な形で実施し今年度から本格導入した。女性管理職と役員がペアになり、1年間かけ毎月一回の頻度で悩みや相談など何でも話し合う制度。日ごろ接点のない役員との面談で、視点の違う話に多くの気づきがあるという。直属の上司には話せない悩みなども言いやすく、役員からは「社内は実質的に男性中心になっており、その中で女性がどのようにマネジメントしていけるのか、その手助けができることは有意義だ。逆に我々が気づく面も多い」と一柳グループ長は説明する。ダイバーシティーの推進も人育成の重要な柱のひとつでもある。
「学び続ける」姿勢が身に着く筆記試験
合格が昇格の条件に
他業界を含めてもあまりない教育制度が、全社一斉で実施される筆記試験だろう。まずは保険商品、法制度、社内規定、メンタルヘルスなど、社内の業務遂行に欠かせない事項を学習ツールで学び、その都度、eラーニング上のテストに合格しなければならない。eラーニングで合格した社員は、年1回実施される全社一斉のペーパーテストを受験し、合格点をとる必要がある。合格しないと昇格はできない制度になっている。設問は100問あり70点が合格点になるそうだ。
管理部門であっても商品知識を学ばなければならず、逆に営業部門であっても管理上の知識習得が求められる。専門部門しか知らない社員ではなく、会社のことはすべてわかる社員になってもらうのが狙い。会社のことを勉強する機会になるし、何よりも学び続ける姿勢が身に着くことになるのだろう。
あいおいニッセイ同和損保の人材育成には「学ばざるは卑し」という印象を受ける。ただし、その展開が社員にとって、やらされ感であれば、単なる知識の習得に終わってしまうのだろう。だからこそ人財革新グループの工夫が随所に見える。保険業界は生き残りをかけた厳しい時期が続いている。自ら考え判断し行動に移せる逞しい社員をどれだけ育成できたのか、人材の数の多さも勝敗のかぎを握る要因のひとつ。
厳しい時代だからこそ、向上心ある社員が不可欠であることは言うまでもない。だが、社員とはいえ簡単には人は動かない。その前提で同社が目指す「危機を乗り切る強い社員の育成」には、社員がやる気を出す、適切で的を射た研修・教育プログラムが有効になるのだろう。そのために人財革新グループ自らが、学び、考え、新しいことにチャレンジしている姿勢が鮮明に見ることができた。