世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年11月23日

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 根本的な問題は、エチオピア国民の間には、長年民族の連合体としての国家観やそれに基づく政治的主張が定着しており、アビィの掲げる理想である中央集権的な脱民族主義的国家観が未だ十分な共感を得ていないことにあるのではないかと思われる。そしてこれが、政府軍の士気にも影響しているようにも見える。特に、民族意識の強いオロモ族、ティグレ族にとり、アビィの中央集権強化は、帝制時代やメンギスツの共産主義政権への回帰を連想させた。

政府と反政府の交渉は容易ではない

 2018年、アビィは、長年にわたるティグレ族政権に対する国内の反発を背景に、多数派のオロモ族出身者(母親はアムハラ族)としては初めて首相に就任した。民族融和とリベラル的政策を推進し、エリトリアとの和平実現といったものでノーベル平和賞を受賞するなど、エチオピアの将来に対する期待を高めた。

 しかし、ティグレ族政権下での利権構造や腐敗の摘発などに対するTPLFの反発と離反、そして民族連合政権から民族を超えた大政翼賛的な与党の設立に対する民族主義者の反発、オロモ族内のライバルや過激民族派との対立もあり、アビィは権力維持のためにかなり強権的な手法をとるようになっていった。また、オロモ族民族派からすれば、アビィの中央集権化は、結局ライバル意識がある歴史的支配勢力のアムハラ族の地位を復活させる恐れがあるとしてその離反を招くこととなった。

 政府側、反政府側双方が非人道的な残虐行為を行っている様であり、反政府側はアビィの退陣を要求しており、他方、政権側はTPLFもOLAもテロリスト団体と指定しているので、双方とも交渉のテーブルに着くのは容易ではないであろう。

 民族間の大量虐殺や首都を戦場とする武力衝突が生ずる可能性は極めて高く、ここ数週間が正念場であろう。アフリカ連合(AU)は、オバサンジョ元ナイジェリア大統領を仲介のための特使に指名し、政権側はこれを受け入れたが、TPLF側が難色を示しているとの情報もある。

 問題の根本的な解決は容易ではないが、当面の大量虐殺といった事態を避けることが最優先であり、その為には、国連や欧米による働きかけに加えて、アフリカ人による仲介がより期待できるようにも思える。

  
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