メルケル首相にはそもそも解決する気がなかった。ショルツ新首相がこれをどうするか、注目される。メルケル前政権でも、クランプ=カレンバウアー国防相は、何とかこの問題を動かそうとしたが、メルケル首相に関心がなく進展を見なかった。後継戦闘機が選択されなければ、いつまでもこの問題は棚ざらしであり、場合によっては核共有がフェードアウトしてしまうことにもなりかねない。
アキレス腱となりえる財政政策
財政政策の面では、FDP出身のリントナー蔵相が、新政権の一番の急所になり得る。緑の党のベアボック外相を心配する向きも多いが、リントナーはベアボック以上に頑固になり得るし、何より州政府レベルでの経験が全くなしで、いきなり主要官庁の大臣となった。しかも、財政的には「増税ゼロ」を主張し続けており、これが将来への投資とどう両立するのかは心もとない。こと財政支出に関しては、緑と社民党はともに積極的な方向にひっぱり、FDPが全く逆方向というのが、ほとんどの場合であろう。
前回2017年のちょうど今頃、CDU/CSU、緑の党、FDPの三党連立政権交渉を投げ出したのはリントナーであっただけに、今回の連立交渉も帰趨が懸念されたが、今回はなんとか連立協定までこぎつけた。しかし、将来的に連立に危機をもたらしうるのは、やはりリントナー蔵相であるように思われる。それは、内政レベルの「債務ブレーキ」問題かもしれないし、EUレベルの債務共通化問題かもしれない。
ショルツはドイツの蔵相としては、欧州連合(EU)レベルでも内政でも、コロナという理由はあったものの、かなり財政規律を緩めた。これはコロナ状況をみても、どう考えても当面続けざるを得ないが、それをリントナーが許さないという対立も想像できる。
しかし、全般的にはドイツとEUが必要としている将来像を持っている政権であり、順調な船出になることが期待される。コロナ情勢は全く予断を許さず、この危機対応を誤れば、船出早々大きな傷を負うことにもなりかねず、難しい情勢が続く。