世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年12月13日

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 ドイツでは11月24日に社民党(SDP)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党による連立政権についての合意が成立し、12月8日の議会での首相指名を経て社民党のオラフ・ショルツ(メルケルの大連立政権で蔵相を務めた)が新首相に就任することとなった。

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 これで、16年続いたメルケル時代がやっと終わった。日本ではメルケルに対し幻想を持つ人が少なくなかったが、国際メディア、特にエコノミスト誌やフィナンシャル・タイムズといった英語メディアでのメルケルの評価は大変低い。調整型・コンセンサス型のメルケルは、大失敗はしないし、世論の後をついて行くので、総じて国民に人気はあった。しかしそれは、痛みを伴う改革を何一つなさなかったことを意味している。

 この16年間、ドイツが順風満帆であったのは、シュレーダー政権の労働市場改革と、中国市場の拡大に乗っかったおかげであり、メルケルがやったことと言えば、ひたすら中国に媚びを売り続けたことぐらいである。

 それと比べれば、各党のシンボルカラーから「信号連立」と呼ばれる新政権は、はるかにプロ・ビジネスであり、前向きである。ドイツのデジタル化・近代化を推し進め、イノベーションを通じて気候温暖化に対応することを目指している。しかも、単なる左派政権でなく、自由主義のFDPが加わったことで、バランスが取れるのではないかという期待もある。とはいえ、もちろん難しい課題は山積している。

 安全保障政策では、米国との核共有がどうなるかが一つの注目点である。ドイツの核兵器禁止条約オブザーバー参加について懸念する向きがある。ただ、これに関しては、それほど心配することではない。もちろん、アメリカにしてみれば面白くないであろうが、別にドイツとてすぐに核兵器禁止に参加できるなどと思っているわけではない。

 現実にロシアの脅威はあるし、特に隣国ポーランドやバルト三国はこれを非常に心配しているから、当分アメリカの核はドイツにもあった方がいい。ドイツ自身はこれをそれほど欲しいとは思っていないのだが、ドイツがいらないと言えば、ポーランドやルーマニアが手を上げる可能性があり、そうなればロシアが激怒することは目に見えているので、対露関係を重んじる社民党としてはひとまずは継続を選択ということであろう。

 それより深刻なのは、トルネード戦闘機の後継機選択の問題である。トルネード戦闘機は米国の戦術核爆弾を搭載可能で、核共有の核心的枠割を担っている。同機後継の件は、かなり前からくすぶっており、よほど上からの政治的指導力がなければ解決できない。

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