2024年7月18日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年1月16日

57兆円相当の景気浮揚策

 問題は、インフレの再燃が今後の中国経済にとって一体何を意味するのかということだ。そしてそもそも、一旦沈静化したはずのインフレは再燃の兆しを見せ始めているのは一体なぜなのか。それらの問いに答えるためにはここで一度、2009年以来の中国経済の変動を見てみる必要がある。

 2008年夏に発生したリーマンショックとその後の世界同時不況は、中国経済にも多大な打撃を与えた。輸出の拡大をもって成長を支えてきた中国経済は、その時点すでに日本経済以上に対外依存度を高めていたから、同時不況にあえぐ米国を中心とする海外諸国への大幅な輸出減が経済の失速を招いた。実際、2009年第1四半期の成長率は普段の二桁成長から大幅に落ちて、6.1%という中国にとって深刻な数字となった。

 成長率のさらなる下落を食い止めるために、当時の中国政府は乾坤一擲の景気対策を打ち出した。当時の為替レートで日本円にして57兆円相当の緊急な一括景気浮揚策を断行したのである。その大半はもちろん政府による財政出動であって、資金の使い道はほとんど公共事業投資の拡大である。

 それと連動して、中国政府は2009年と2010年の2年間にわたって史上最大規模の金融緩和をも行った。中央銀行に命じて札を刷りまくって湯水のように供給することによって、景気の浮揚を図ろうとしたわけである。その結果、たとえば2009年の1年間において中国の各銀行が企業その他を対象に行った新規融資の総額は9.7兆元(日本円120兆円相当)に上ったが、それは実は、当年度の中国の国内総生産の33.5兆元の2割以上、約3割にも相当するという信じられないほどの巨額の放漫融資であり、世界金融史上前代未聞の札の濫発となった。

金融引き締め政策の副作用

 その結果、中国市場に放出されている流動性(M2)は極端に膨らみ、中国という国はまさに紙幣の大洪水に覆われた様相であった。アメリカでは市場に流通しているM2の量はGDPの7割を超えてはいけないという法律まで作って紙幣の濫発を制限しているが、中国の場合、2010年となると、市場に流通している人民元の量はGDPの約2倍にもなっていた。まさに史上最大の流動性の氾濫である。

 しかし流動性はそこまで膨らむと、結果として当然、紙幣の価値が大幅に失われてしまい、それは直ちに、モノの価値の上昇、すなわち物価上昇=インフレとなって現れてくるのである。実際、中国では2009年の年末からインフレが始まった。


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