2024年7月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年1月16日

 そしてその中で、再び危機的状況に立たされたのはやはり中国政府である。成長率がそのまま下がっていけば、前回のコラムで指摘した「2.3億人の流動人口」は確実にその行き場を失ってしまい、それもまた、社会的大動乱の発生を招きかねない。

 このような悪夢を避けるために、実は2012年の夏頃から、中国政府は再び経済政策の転換を図った。つまり、インフレ退治のための金融引き締め策から一転して、今度はもう一度の金融緩和を実施し出したのだ。そして2012年の秋に中国政府はまた鉄道や港湾、高速道路など総額1兆元(約12兆4000億円)規模の公共投資を認可した。つまり、減速する一方の中国経済を救うために、中国政府はかつて来た道を歩み、札の濫発=公共事業の拡大という「カンフル剤」をふたたび飲むことにしたわけである。

 そしてその結果、せっかくの金融引き締め政策によって抑え付けられたはずの物価は去年の12月からふたたび上昇傾向となり、本文の冒頭で指摘したインフレの再燃はもう一度、中国経済の「大勢」となってしまったのである。

波乱に満ちた1年に

 さて、今年を通じて再燃してくるはずのインフレの中、中国の新政権は一体どう対処するかは当然大きな問題となってくる。新政権は今後の経済運営において大変なジレンマに陥っていくはずである。今の金融緩和・公共事業投資拡大路線を継続して行けば、結果的には物価の上昇=インフレはますます深刻な問題となってしまい、「数億人の貧困層が生活できなくなる」という2011年の悪夢が蘇ってくる。しかし、それを避けるために今の金融緩和・公共事業投資拡大をやめてしまえば、中国経済のさらなる減速はもはや避けられない。そうすると、行き場を失う「2.3億人流動人口」の行方はまた、政権にとっての命取りの火種となるのである。

 言ってみれば、インフレで死ぬか、経済減速で死ぬか、という究極な二者択一の選択は中国の新しい指導部に迫ってくるわけだが、彼らは一体、どちらかを選ぶのだろうか。

 結局、どちらを選ぶにしても、中国経済の2013年は間違いなく、波乱に満ちた大変な一年となることは間違いないだろうと思う次第である。

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