英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)のトム・ミッチェル北京支局長が、12月3日付の同紙で、DiDi(滴滴出行)のニューヨーク(NY)株式市場における上場廃止の決定は、習近平がDiDiを含む中国企業に中国共産党の統制に服せしめることを意図したものであるとの論説を書いている。
12月3日、DiDiはNY市場での上場を廃止することを発表した。同日のニューヨーク市場ではDiDiを含め中国株は軒並み売りを浴びることとなった。
この一件は恐らくNY市場における中国企業の新規株式公開の弔鐘となるものである。DiDiは何故NY市場における上場を廃止するのかを説明していない。表面上の理由はDiDiのデータ管理との関連での国家安全保障に対する懸念(6月30日に NY市場に上場を果たしたばかりのDiDiに国家安全保障の理由で当局が調査に入ることとなった) ということらしい。権限を拡大しつつある中国サイバースペース管理局が上場廃止の圧力をかけたとの憶測もある。
本当のところは明らかになっていないが、FTの論説が論じているように、習近平にはテク企業が共産党の権威を害するような存在に育つように映り、彼等もまた共産党の統制に服すべきことを明確にすることを意図したものであろう。DiDiだけの問題ではない。中国企業がNY市場に上場する自由は失われたのであろう。今後、DiDiの他にもNY市場から撤退を余儀なくされる中国企業が出て来るのかも知れない。
他方、米国でも米国の資金が中国の軍事企業やテク企業に流入することを阻止すべしとする政治的圧力は今後とも高まるであろう。昨年12月には「外国企業説明責任法(Holding Foreign Companies Accountable Act)」が成立したが、同法は、米国の証券取引所に上場する外国企業について、外国政府の支配・管理下にないことの立証義務を課すとともに、その企業の監査法人が公開会社会計監督委員会 (PCAOB)の検査を3年連続受け入れなかった場合、当該企業の上場が廃止されることを定めている。中国はこの検査を拒否している。