立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2021年12月19日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 
 日本にはびこる、働き方を巡る「なぜ」の正体とその対処を、人事・労務の専門家の立場から解説した著書『「なぜ」から始まる「働く」の未来』(ウェッジ刊)の著者である立花聡氏が、働き方改革の焦点の1つである「社員の個人事業主化」の現状について、その先頭を行く企業であるタニタへのトップインタビューを行いました。その内容を2回にわけてご紹介します。
社員の個人事業主化には、課題も山積している(写真はイメージ。 whyframestudio/gettyimages)

 社員の個人事業主化が、脚光を浴びる存在になってきた。

 時代の流れであり、決して間違いとは言えない。だが、それで多くの雇用がフェードアウトし、労使関係が取引関係に変わっていくのだとしたらどうだろうか。

 そもそも、日本においては「雇用」という労使の人間関係に特別な意味が込められている以上、単純な個人事業主化でいいのか。しかも社員の誰もが事業主に向いているわけではない。

 体脂肪計で国内シェア首位の健康機器メーカー、タニタ(東京・板橋)は他社に先駆け、2017年から社員が「個人事業主」として独立することを支援する取り組みをはじめている。開始から4年、現場と現状を知るために、谷田千里社長に話を聞いた。

「Do the Right thing」と「Do the thing Right」

――タニタといえば、「健康」。企業にも国家にも健康が欠かせません。「企業の健康をはかる」「企業の健康をつくる」から、「健康な働き方・働かせ方づくり」、さらに「日本の活性化(健康づくり)」まで、谷田社長が作り上げた文脈をみると、「健康」というキーワードをもって、ものすごく整合性がありますね。日本産業社会の健康づくりのリーダーという貫録を感じます。

谷田千里社長(以下「谷田」) タニタは「健康づくり」というポジションにこだわってきました。使わなくてもいい医療費を節約してその分無駄をなくせば、消費税や所得税を上げなくても賄える。日本の健康のために寄与できたことで、自分としては達成感が高いと思っています。

谷田千里社長

 社長になって、これからの人生について考えました。もちろんお金を稼ぐのも必要ですが、何か人生のテーマを作りたいと。そこでイメージをしてみました。リタイヤしたときに、会社を潰すことなく、次の社長に譲る。少なくとも、会社は存続して雇用も守ってきました。でもそれだけじゃやはり味気ない人生で、嫌ですね。

――「Do the Right thing」(正しいことをせよ)、「Do the thing Right」(ものごとを正しく行え)という言葉があります。社員の個人事業主化が「Right thing」だとすれば、それはタニタという単体企業だけでなく、日本産業界全体に浸透してほしいと願うところです。

 そしていよいよ実施段階にあたっては、「Do the thing Right」、いかに効率よく仕上げていくかが問題となります。具体的に、タニタという会社では、個人事業主化に取り組んできて、どんな課題があったのでしょうか。

谷田 会社には、やる気のある社員とそうでない社員がいます。結論からいうと、この2つのグループが存在しているのが課題ではないかと思います。

 社員のモチベーションが上がらないのはどうしてでしょうか。生活のために会社からお金をもらって、仕方なく仕事をやっているから、ダメなんですね。自分のやりたいことと会社のやりたいことがちゃんとすり合わせできたら、それはもう寝ないでもやりたいことになる。それくらいのやる気が出れば、結果的に楽しくて、会社の仕事を自分事のようにやるでしょう。

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