2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月30日

 AEI日本研究部長のオースリン(Michael Auslin)が、1月3日付WSJ紙掲載の論説で、2013年のアジア情勢を展望して、最も憂慮すべきことは、ナショナリズムは高揚しているが、具体的問題について誰も解決案を持たず、解決のための外交的動きもないということであり、来年で勃発から百周年を迎える第一次大戦の時もそうだった、と論じています。

 すなわち、アジア、ことに北東アジアは、2013年に全世界の安定を脅かしかねない火種を抱えている。域内に抗争が目立ち、諸国間に相互信頼が見られない現状に鑑み、アジアにおけるこれらの問題が今後12ヶ月の間に解決されると期待できる材料は見当たらない。状況はますます悪化の一途を辿り、複雑な国際問題にまで発展してしまう危険性を孕んでいる。

 東アジアで最も気掛かりな傾向は、こうした問題の解決に向けて、全く何ら進展が見られないことである。解決に向けての外交的イニシアティブが全く見られないし、直接当事国も、より広範な合意に向けて二国間で問題を解決する努力を模索していない。それどころか、政治家達が態度を硬化させ、それぞれの国でナショナリズムを煽っている。

 米国は、域内秩序の調停者たりえる国だが、アジアにおける国際問題の解決に乗り出すことは拒絶している。オバマ政権はアジアへの軸足移動を言明してはいるものの、こうした領土問題からは身をかわす意図を明確にしている。米国は、北朝鮮のミサイル発射や核実験に対してすら、何ら反応を示していない。

 そこで、アジアは他に頼らずこれらの問題を独力で解決しなければならないのだが、こうした状況にあっても、アジアが問題解決にほとんど何ら関心を示していないことに、世界は、警戒心を持つ必要がある。一世紀前の欧州も、域内の経済統合が深化してきているにも関わらず、さまざまな域内対立に対しては無力であったという事例を思い起こすべきだ。来年、2014年は第一次世界大戦勃発百周年に当たるが、その時の教訓はもう既に忘れ去れた観がある、と論じています。

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 この論説は、オースリンの新年冒頭のアジア情勢の判断であり、事実関係などに新しいものはありませんが、問題は山積しているのに解決の糸口さえ見当たらない、という分析に特徴があります。解決の糸口が見あたらないというのはその通りでしょう。少なくとも、現時点において、中国側には、事態を鎮静化させ、問題を解決しようという意図が無いように見えます。


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