2021年3月17日、オランダでは下院の総選挙が行われた。マーク・ルッテ首相が率いる与党VVD(自由民主国民党) は第一党を維持するも、得票率は22%であり、政府の運営にとって連立政権は不可欠のものとなった。結局、第二党となったD66(民主66党) 、CDA(キリスト教民主同盟) 及びCU(キリスト教連合)と連立を組むことになったが、与党4党の合意がまとまるまでに、9カ月(271日)を要した。
12月13日、与党4党は連立合意に達したことを発表し、12月15日には、その内容を公表した。
12月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)では、FT欧州編集者のベン・ホールがオランダのマーク・ルッテ率いる第四次政権の連立合意が公表され、欧州連合(EU)政策の転換が明らかになったことを論じている。
マーク・ルッテ首相はスキャンダルに耐え、3月の下院選挙を乗り切って政治的にしぶといところを見せ(その故に「Teflon Mark」だとされる)、9カ月を経て、12月15日、VVDと従来の連立相手と同じ3党との連立合意が公表された。彼は第四次の政権を率い、EU内ではハンガリーのオルバン首相に次ぐ長期の政権を担当することになる。
連立合意はオランダの小さな政府と均衡財政という伝統的な路線を逸脱する先例のないものであることが注目されている。ルッテも財政規律のタカ派であったはずである。恐らくは、連立合意をまとめるために、特に選挙に勝って連立の第二党になったD66の意を迎えるために、機を見るに敏なルッテが路線の変更に踏み切ったということであろう。
EU政策について言えば、政策の変更がどこまで基本的なものかにわかに判断困難であり、今後の展開を見なければなるまいが、オランダが建設的で協調的な姿勢に転換することは EUにとって歓迎すべきことに違いない。特に、EUの将来の財政ルールをどうするかの問題は重要であり、オランダが少なくともその「近代化」に応ずるとしていることは朗報であろう。EUの復興基金の財源であるEUの債券の償還を新たな税で手当てする問題も重要な課題であり、オランダが炭素税やデジタル課税に言及していることも注目されよう。