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World Energy Watch

2022年1月5日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

(Scharfsinn86/gettyimages)

 米国、欧州連合(EU)、カナダ、英国、日本などの主要国が、2050年に温室効果ガス実質排出量ゼロを宣言している。実現のため各国が注力しているのは、電源の脱炭素化と水素の利用だ。

 温室効果ガスの大半を占める化石燃料の燃焼から発生する二酸化炭素(CO2)の世界の分野別排出量は、発電・熱部門が44%、自動車主体の輸送部門26%、産業部門19%(図-1左図)だ。発電を再生可能エネルギーと原子力に変えれば、大きな比率を占める発電部門の脱炭素は可能だ。

 輸送部門でも乗用車の脱炭素は電気を利用することで可能になるが、重い電池を搭載できない航空機、長距離トラックの電動化には蓄電池の大きなイノベーションが必要になる。輸送部門で電動化が難しい場合に利用されるのは水素になる。水素を利用する燃料電池、あるいは水素と大気中から吸着したCO2から製造されるe燃料が利用される。さらに、化石燃料を利用する産業部門でも電動化が難しい分野では水素が化石燃料に取って代わることが想定されている。

米国もフランスも原子力発電でクリーン水素製造に

 1年前にも、脱炭素戦略の中心に水素が躍り出ると書いたが(「21世紀を水素の世紀にするカギは電気、気候変動対策の主役に躍り出た水素を考える」)、この1年間で欧米を中心に多くの水素利用の具体策が出てきた。例えば、ディーゼル機関車に代わり水素利用の燃料電池列車が欧州主要国で広まり始めた。エネルギー多消費型産業の代表、高炉製鉄業でも脱炭素のため水素利用が具体化してきた。

 需要に応えるため競争力のある水素製造に欧州主要国、米国などが乗り出し、CO2を排出しない電源からの電気を利用した水の電気分解(電解)による水素製造が脚光を浴びてきた。米、仏政府などは水素製造用電気に原子力発電を利用する考えを明らかにしている。21年8月から10月にかけ、米国エネルギー省(DOE)はニューヨーク州とアリゾナ州の既存原子力発電所の隣接地に設置される電解プラントへの補助金支出を決めた。

 21年10月フランス・マクロン大統領は、小型モジュール炉(SMR)新設と原子力の電気利用の電解による水素製造を発表した。再生可能エネルギーを利用し電解により製造される水素は、グリーン水素と呼ばれるが、米国政府もマクロン大統領も原子力利用により製造される水素をクリーンあるいはグリーン水素と呼んでいる。

 日本企業は豪州の褐炭から水素を製造し、排出されるCO2を捕捉する事業を進めている。水素を液化あるいはアンモニアの形にして日本に運ぶが、需要地に設置する電解プラントによる地産地消の水素との比較では、輸送に係る費用から競争力に疑問符が付く。日本が進めるべき水素製造の主体は、水素を必要とする工業地帯などにSMRと電解プラント設置により製造を地産地消で進め、地域経済と雇用に寄与することではないか。

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