2022年11月29日(火)

World Energy Watch

2022年1月5日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 21年末に3基の原発を停止し、22年末には最後の3基の停止により脱原発を実現するドイツは、フランスのように原子力の電気で水素を製造することはできない。鉄鋼、化学などエネルギー多消費型産業を持つドイツでは水素製造に必要な50年の電力量は、今の全需要量に匹敵すると言われているが、国土の広さから水素製造に必要な再エネ電源設備を国内に設置することは不可能とみられている。

 このため、ドイツは海外から水素を輸入するしかなく、既に豪州内の再エネ電源利用による水素製造の企業化調査に関する覚書を豪州と締結している。フランスとの比較ではコスト高は免れない。

ドイツの二の舞になってはいけない

 鉄鋼、化学、セメントなどエネルギー多消費型産業を持つ日本も、大量の水素をこれから必要とすることになる。豪州の褐炭から製造する水素の量は限られることになり、国内で電解による水素製造を視野に入れる必要がある。輸送インフラ、コストを考えるならば、水素を必要とする工業地帯など需要地ごとにSMRと電解装置を設置し、水素を製造するのが、最も競争力を持つことになる。

 脱原発を行うドイツは選択肢がなく輸入水素にも依存せざるを得ないが、日本は幸いにも原子力利用という選択肢を保有している。水素が次の時代の国の競争力に大きな影響を与えることは、はっきりしている。

 欧米主要国に加え、中露もSMR利用の水素製造に走り出している。エネルギーの地産地消により地域経済の活性化と雇用創出を行うのであれば再エネ導入ではなくSMRによる水素製造を行うべきだ。収入と雇用が増えなければ、日本の少子化も止まらない。決断のために残された時間は長くはない。

 
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