MIT教授のバリー・ポーゼン(Barry Posen)が、フォーリン・アフェアーズ1-2月号掲載の論文で、米国は今まで通りに世界の安全保障に責任を持ち続けられるかどうか分らず、続けられるのならばそれでも良いが、そうでない場合、突然に責任を放棄するよりも、今から時間をかけて、同盟国がしかるべき負担を負う形を作っておくべきである、と論じています。
すなわち、大統領選における民主、共和両党の政策を聞いていても、米国が国際的責任を持ち続けるという点では、両党とも同じである。冷戦以来の米軍事力の世界的展開を継続する上、中国をウォッチ・リストに加えている。
こんなことをしていると、次から次に、限りなく問題に対処しなければならず、同盟国はそれに甘えて防衛努力をしない。もう、そろそろ、世界を改革するということは諦めて、アメリカの国益に集中すべきである。
中国は、すでに恐るべき競争者になりつつある。ソ連の脅威が激しかった70年代半ば、ソ連のGDPは、購買力では米国の57%に達していたが、中国の場合は、もちろん一人当たりはまだまだ低いが、2011年には75%、2017年には米国と並ぶと予想されている。
このような状況の中で、現在のようなことをしていると、同盟国のフリー・ライドを許すことになる。日本の場合、計算の仕方にもよるが、過去十年間、防衛費は削減あるいは停滞している。米国がGDPの4.6%を使っているのに、NATO諸国は1.6%、日本は1%であり、これはドイツ、日本のような金持ちに社会保障を与えているようなものである。
また米国の保証は危険でもある。台湾の民進党政権時代、台湾が独立を仄めかして中国を挑発したのはアメリカの保護を恃んでのことであった。フィリピンやべトナムも米国の庇護を恃んで挑発的な行動をしている。イスラエルについてもそう言える。
米国の伝統的戦略は、ユーラシア大陸における一国の覇権は許さないということであり、そのためにドイツ、日本と戦い、ソ連を封じ込めてきた。しかし、中国が覇権を握るかどうか、まだ、差し迫ってもいないし、不可避的でもない。また、インド、ロシアなどによってチェックできる。特に日本は、今は軽い負担しかしていないが、裕福で科学技術も優れている。現在の取り決めでは、米国は日本防衛を負担し、日本はそれを補助しているが、この取り決めは再交渉され、逆転されねばならない。
中国の興隆を前にして、米国はこの地域から去ることはできないが、当面の必要以外は削減できる。基地問題などのある海兵隊は引き揚げ、海空軍は削減すべきである。
世界的に、経費節減のため、そして、同盟国に対して自助努力をすべき時が来たことを告げるために、駐留米軍を削減すべきである。それは、同盟国が自国の防衛力を強化し、政治外交的にも自分で自分の世話をできるようにさせるために、10年ぐらいかけてゆっくり行われるべきである。