風雲急の〝3つの危機〟
バイデン政権が直面する対外的な難問は中国による台湾侵攻の懸念、ロシア軍のウクライナ侵攻の脅威、イラン核合意の破綻――という〝3つの危機〟だ。
特にウクライナ情勢は23日、米国務省が在ウクライナ米大使館職員の家族に国外退去を命じ、ロシアとウクライナへの渡航警戒レベルを最も厳しい「渡航中止」に引き上げたほど緊張が高まっている。米高官は「ロシアの軍事行動はいつでも起こり得る」と警告している。
ウイーンで続けられてきたイラン核合意の再建交渉は昨年末に再開したものの、制裁の解除が先決とするイランと、核合意の順守を要求する米国との隔たりは大きく、進展は見られていない。一方で、イランは核開発を続行しており、このままでは核保有にさらに近づくのは確実。イスラエルによる軍事攻撃の可能性が高まり、イラン危機が再燃するのに多くの時間を必要としないだろう。
イランが核協議での支持を得るため、また米制裁による経済悪化に歯止めを掛けるため、合意の当事者であるロシアや中国に接近するのは当然の帰結であり、米国と対立する中国やロシアにとってもエネルギー資源豊富なイランを陣営に引き入れることには大きなメリットがある。
中露とイランは3カ国枢軸を誇示するようにこのほど、ペルシャ湾の外側のオマーン湾付近で海軍の合同演習を実施した。 〝3つの危機〟が3カ国枢軸と米国連合の対決の中でどう展開するのか、国際情勢は風雲急を告げている。