2024年4月16日(火)

ザ・ジャパニーズ3.0(昭和、平成、令和) ~今の日本人に必要なアップデート~

2022年2月3日

欧米に20年遅れた次世代教育

 ここで提唱されている21世紀型スキルは、日本のオリジナルではない。実は欧米では、高度情報化社会の到来を見越して、20世紀の後半から次世代を生きるのに必要なスキルの研究がなされていたのである。上の表中で「コンピテンシー」という言葉を赤でハイライトしたが、これは国際化と高度情報化の進行とともに多様性が増した複雑な社会に必要とされる能力概念である。

 経済協力開発機構(OECD)が1997年から2003年にわたって実施した国際研究プロジェクト(日本は不参加)の成果として発表されたもので、発表直後から欧米やシンガポールなどの教育方針に大きな影響を与えている。それがようやく日本においても、大学入試改革や中高入試における思考コードC領域の出題につながっているのだ。しかし、よくよく考えると、21世紀が始まってから20年以上経ってしまっているではないか。欧米諸国に対して我が国における次世代教育へのシフトがあまりにも遅くはないだろうか。

「貧しい日本」の根幹はコンピテンシーの欠如?

 私が生まれ、育ち、受験をした昭和という時代。就職すれば、終身雇用制度により定年まで働くことができ、しかも年功序列の処遇制度の中で、年次を重ねるほどに給与は上昇した。65歳の定年時には十分な退職金が支給され、年金と合わせて約80年の天寿を豊かに全うできた。持続的に経済が成長することを前提に、「明日は今日より必ず豊かになる」という幸せな時代であった。戦後の焼け跡から復興し、高度成長時代を経て世界トップの工業国に上り詰めた。そしてジャパン・アズ・ナンバーワンはバブル経済で頂点に達した。

 しかし、平成という時代の始まりとともにバブル経済は崩壊し、そこから日本は「失われた30年」を過ごしてきた。リーマンショックのような未曾有の経済危機が起こり、足元ではコロナ禍に苦しむ。人生は100年時代となったが、受験生が就職を切望する大企業であっても経済危機の前では無力であることが証明された。給与は上がらず、むしろリストラや退職勧奨が行われる。過去の尺度で未来が図ることなどできなくなってしまった現在。そして昭和では考えられなかったが、「明日は今日より貧しくなる時代」にすらなってしまったのである。

 この「貧しい日本」に対する危機感は、昨年秋口から一気に進んだ日本売りとも言える円安によって急速にクローズアップされている。このような状況を改善できない政治、日銀、企業経営者などに対する国民の不満のマグマは増大しているが、不確実性の高い今の時代を生き抜く日本人一人ひとりのスキル、つまりコンピテンシー獲得への取り組みが、他の先進国比で20年もビハインドしている状況こそが問題なのではないだろうか。こう考えると、入学試験でふるい落とされないようにと今日もひたすら知識を詰め込もうとしている受験生が痛々しく見える。


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