2024年4月25日(木)

インドから見た世界のリアル

2022年2月21日

 中国は自国でS-400地対空ミサイルを保有しており、突破する方法についても熟知しているものとみられる。具体的には、中国が現在保有するDF-17極超音速ミサイルをパキスタンに提供する可能性があることが指摘されている(Sakshi Tiwari, “China Could Equip Pakistan With Hypersonic DF-17 Missiles To Neutralize India’s ‘Game-Changing’ S-400 Defense System – Experts”, The EurAsia Times, January 27, 2022)。

日本にとっての示唆 中国が日本向けにミサイル配備を減らす?

 印パ間のミサイル競争は、一見すると日本と直接つながっていないように見える。しかし、実際には大いに関係がある。もし、インドが十分な数のミサイルを中国向けに配備していると、中国もインド向けにミサイルを配備する。その場合、中国は日本向けに配備しているミサイルの数を減らす可能性があるからだ。

 しかし、もし中国がパキスタンにミサイル技術を提供し、パキスタンが中国のDF-17のようなミサイルを配備した場合、インドは、パキスタン向けにより多くのミサイルを配備し、中国向けに配備したミサイルの数を減らすかもしれない。

 インドが中国向けに配備したミサイルの数を減らすと、中国もインド向けに配備したミサイルの数を減らす。そして、中国のミサイル戦力に余裕が出て、中国はその余裕が出た分を、日本向けに配備する可能性が出てくるのである。つまり、パキスタンのミサイルが増えると、中国が日本攻撃のために使えるミサイルが増える可能性が出てくるというわけである。

 実際には、もっと複雑な計算が必要なのであるが、印パのミサイル戦力のバランスが日中のミサイル戦力のバランスに影響を与えることは間違いないところであろう。だから、日本としては、印パのミサイル戦力のバランスは、インドが少し優位になるくらいがいい。

 今、日米の間でも、インド太平洋に何発のミサイルが必要か、といった議論が活発になっている。新たに米国の中距離弾道ミサイルを、インド太平洋地域に、配備することも計画されている。そうした議論に、印中間のミサイル戦力バランスは影響を与えるから、つまり、印パ間のミサイル戦力のバランスも、一定の影響力を与えるのである。注目である。

 
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