2022年12月5日(月)

バイデンのアメリカ

2022年2月26日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

割れる国民と議会の反応

 そのバイデン政権が当面、最も気がかりなのが、米国民の受け止め方だ。

 AP通信が24日、ウクライナ危機に関連してシカゴ大学と共同で実施した米国世論調査結果によると、「米国はロシア―ウクライナ戦争に積極的に関与すべきだ」と答えた人は26%だったのに対し、52%が「果たす役割は最低限にとどめるべきだ」と回答した。また、「何ら関与すべきでない」と答えた人も20%に達した。

 米国民の7割以上が、ウクライナ問題に冷ややかな見方をしていることを裏付けている。AP通信も「バイデン政権はウクライナに米軍を投入するつもりがないことを繰り返し言明してきたにもかかわらず、平均的米国人は対外関与そのものに疲労感を抱いていることを示している」と解説している。

 ジェーン・サキ大統領報道官は同日、このAP通信報道についてコメントを求められ「われわれの戦略的決定は国家安全保障上、何がベストかの判断に基づき下されるのであって、世論調査結果によるものではない。大統領は、同盟諸国との協調を深めると同時に、国内統一を図ることに邁進している」と反論した。

 しかし、多くの国民がここ数年来、米軍海外投入のみならず国際情勢全般に対する関心よりも、物価上昇やコロナ禍による身近な生活の質の低下をより心配していることも否定できない。

 それだけに、バイデン政権としては、これまで以上の厳しい対露制裁を科すことになった場合、国民の犠牲もより大きくなるだけに、対応もより慎重にならざるを得ない。

 一方、米国民の冷めた反応をよそに、野党共和党指導部内では、バイデン政権に対し、より厳しい対露制裁を望む声が目立っている。

 同党のミッチ・マコーネル上院院内総務は24日、バイデン大統領から直接ブリーフィングを受けた後、地元ケンタッキー州での集会で、「ロシアに対しては徹底的に制裁を科すべきであり、同時にウクライナに最大限の援助の手を差し伸べるべきだ」と大統領に進言したことを明らかにした。

 同じ共和党で上院財務委員会の重鎮であるパット・トゥーミー議員も、これまでのバイデン政権の措置を支持する一方「それだけでは不十分であり、ロシアのあらゆる銀行が米側と取引ができなくなる措置、さらにはロシアの石油、天然ガス産業に対する直接制裁も検討すべきだ」とより強気の姿勢を示した。

 与党民主党議会では、ロバート・メネンデス上院外交委員長も声明で「プーチン個人に対しても最大限のコストを負担させるべきだ」として、「SWIFT」制裁も含め早急に検討するよう求めた。

 これまで内外政策めぐり対立を深めつつあった与野党幹部が、対露強硬姿勢では奇妙な共同歩調ぶりを見せている。

さらに分断引き起こすトランプ

 ただ、共和党で〝異端児〟的立場をとり続けているトランプ前大統領およびその支持層だけは例外だ。

 トランプ氏はつい最近、プーチン大統領が「ウクライナ東部地域の分離独立」を発表したことについて、一部メディアに対し「彼は天才だ」と賛辞を贈るとともに、「東部地域への〝平和維持軍派遣〟を支持する」と語った。さらに「自分が大統領だったら、ウクライナ危機は起こらなかった」として、バイデン政権の対応を酷評した。

 トランプ氏側近として知られる保守系テレビ「Fox News」アンカーマン、タッカー・カールソン氏も番組の中で、「ウクライナはわが国にとって死活的に重要な国ではない」として、米国が深入りすることに警告を発した。

 このように、ウクライナ危機は、共和党内部にも亀裂を生じさせる事態ともなっており、バイデン政権にとって、大統領就任当時に掲げた「国論統一」の目標達成はますます困難になりつつある。

  
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