2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2013年2月27日

 その国家安保室長に朴大統領が指名したのが金章洙(キム・ジャンス)である。金章洙とはどういう人物か。

 金室長は、盧武鉉元大統領の最後の国防部長官である。2007年10月、2回目の南北首脳会談に同行した際、金正日(キム・ジョンイル)総書記と挨拶を交わしても、頭を下げなかった逸話が有名である。陸軍士官学校卒業後、主要な野戦指揮官を経て、合同参謀本部作戦本部長や米韓連合司令部副司令官を歴任するなど、国防のプロフェッショナルである。

 朴大統領はそのプロフェッショナリズムを高く評価し、党派の異なる大統領に仕えた前歴を一切問題にせず、重用した。大統領選挙期間中は、国民幸福推進委員会という選挙キャンプの国防安保推進団長、当選後就任までの間は、大統領職継承委員会の「外交国防統一」分科の幹事に抜擢し、ついに、大統領府に新設した国家安保室長に指名し外交安保政策のコントロール・タワーを任せた。パフォーマンスに基づいて一度信頼した人物は最後まで用いるという朴大統領の人事のスタイルがよく表れた例である。

「外交国防統一」へのアプローチから
読み解ける朴の戦略

 大統領職継承委員会とは、米国と同じように韓国でも、大統領選挙(2012年12月19日)から就任(2013年2月25日)までの68日間に、政権公約を実際の政策にブレイクダウンすると同時に、組織と人事を固めるために設置される機関である。委員会は国政課題の性格ごとにいくつかの分科に分かれるが、これまでも「外交国防統一」でひとまとまりであり、金章洙国家安保室長はその幹事だった。他に、尹炳世(ユン・ビョンセ)と崔大錫(チェ・デソク)という2人の委員がいて、それぞれ「外交」と「統一(/北朝鮮)」の専門家であるが、幹事は「国防」という構成であった。

 つまり、「外交国防統一」は個別に政策が立案されるべきではなく、その組織や人事は統合的な観点から行われるべきであるというわけである。例えば、李前大統領の場合は、当初、対北朝鮮政策には他の諸国との外交と比較して特に考慮すべき固有性は存在しないため、南北朝鮮関係だけを専管する統一部は必要なく、外交部に吸収合併するという構想を有していた。その後、政府組織法の改正が野党の猛烈な反対に遭い国会で挫折し実現しなかったものの、「外交国防統一」にいかにアプローチするのかにおいて、それぞれの大統領の強い意向が反映されることは確かである。朴大統領は、何よりも、「国防」「国家安保」を重視する姿勢が歴々としている。

プロフェッショナル・チームを配置

 金章洙国家安保室長の下、統合される外交安保政策を担う面々は以下のとおりである。内閣では、外交部長官に尹炳世(前出)、国防部長官に金秉寛(キム・ビョングァン)、統一部長官に柳吉在(リュ・キルジェ)、大統領府では、外交安保首席補佐官に朱鉄基(チュ・チョルギ)をそれぞれ指名した。いずれも、その分野のプロフェッショナルで、全体としてチームとして構成されていることが特徴である。


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