20位の日本に目を転じると、意外なことに身体の健康(小児死亡率と肥満度)では、第1位の高ランキングを得ている。ただし、能力のランキングは27位と芳しくない。さらに、精神的なウエルフェア=心の健康は、集計対象の38カ国中37位とほぼ最低の水準にランクされている(ちなみに38位はニュージーランドであった)。ここからすれば、日本の子どもは「身体の健康は最高であるが、心の健康はほぼ最下位」ということになる。
心の健康の構成要素である15歳時点でのlife satisfactionは、0点(最悪)から10点(最高)の段階で聴取され、中間5点超えたポイントを回答した子どもの割合で評価されている。最高のランキングであるオランダは90%の子どもが過半の満足度を選択している。
これに対し、日本は62%の子どもしか過半の満足を選んでいない。もう一つの構成要素である、青年の自殺は自殺率が低い順のランキングで27位(ワースト12位)とこれもあまり良い成績ではない。
一方、1位に評価された身体の健康では、児童の死亡率では9位であるが、こども肥満率の方では2位以降の各国が20%を超えている中で、日本は14%と圧倒的な低さを誇って1位となっている。なお、最下位は米国で42%の子どもが肥満であるとされている。
以上のことから、「日本の子どもは心の健康は最下位近くであるが、身体の健康は世界一である。なぜなら日本の子どもは太っていないから」ということになる。先進国の子どもの幸福を議論するにあたり、日本のこの結果はあまり誇らしいものとは言えないであろう。心の満足なしに長生きだけをする社会は、子どもでも大人でも健全とはいえないであろう。
結果がばらける日本での都道府県幸福度ランキング
以下では、ユニセフの国際ランキングの考え方になぞらえて、日本の都道府県別の子ども幸福度ランキングを作成してみてみることとしよう。その前に、子どもに限定しない形の都道府県幸福度ランキング(いわば大人の幸福度)がこれまでいくつか作成公表されているため、その概観を行うと、既存の幸福度調査の結果にはかなり不思議な点がみられることが分かった。
たとえば、日本総合研究所の「都道府県幸福度ランキング」(2020年:修正済版)」では、第1位は福井県、第2位は富山県、第3位が東京都、第4位が石川県と日本海側の北陸県が上位にランクされ、東京もベスト3に入っている。逆にランクの低い県は、44位青森県、45位沖縄県、46位大阪府、47位高知県であった。
これに対して、21年に公表されたブランド総合研究所の都道府県幸福度ランキングでは、かなり違った傾向を持っており、日本総研では幸福度3位の東京都が、ブランド総研の結果では45位と逆にワースト3位となっており、ブランド総研の幸福度1位の沖縄県は、日本総研では45位と大きく評価が分かれている。しかし、どちらの調査でも幸福度が低いとされているのが青森県で、日本総研調査で44位、ブランド総研調査でも43位という結果であった。
ここで、両者のランキングの相関をとったところ、ほとんど相関は見られなかった(図1)。20年と21年という時期の違いの問題を解消するため、ブランド総研の20年のランキングと日本総研の20年のランキングの相関もとってみたがやはりほとんど相関がみられなかった。
この違いは、日本総研のランキングがすでに公表されている社会経済統計から幸福度指標にふさわしいと思われる項目を理論的に組み合わせて算出されているのに対し、ブランド総研は各都道府県の住民合計1万人以上に対し、直接幸福度を調査していることによると思われる。
ここで、ブランド総研の調査方法は幸福度に関する直接の調査なので、より地域住民の幸福度の実態に近いと思われるかもしれない。しかし、回答者個人の主観的な回答であるため、異なる都道府県同士で厳密に比較可能であるかという問題が残る。ある人や地域にとっては良いと思われることが、他の人や地域でも当てはまるのとは限らない。
これに対して日本総研のランキングは個人の主観ではない統一的な指標(金額、比率、件数等)に基づく比較であるため、客観性が高いといえる。しかしここでも、全国を統一の指標で評価できるのか、抽出された評価項目の妥当性のエビデンスはどこにあるのかなどの問題は残る。