NHKスペシャル「18歳で大人というけれど…~成人年齢引き下げを考える~」(3月27日)は、4月から誕生日を迎える200万人の新成人が、経済的、社会的に「自立」する意味について、インタビューやディスカッションなどを通じた多角的な視点から迫った。
TBSから独立して、テレビマンユニオンを設立した萩元清彦さんらによる名著にして、いまもテレビ関係者のバイブルになっている『お前はただの現在に過ぎない テレビになにができるか』(2008年、朝日文庫)がいう、現在を追った正統派の番組である。
変わりつつある若者と日本のイデオロギー感
政府の成人年齢の引き下げの狙いに関する、公表されている理由はこうだ。
少子高齢化のなかで、若者の活力に期待したい、とするものである。選挙権については、すでに15年から18歳に引き下げられている。
成人年齢の引き下げは、実に140年ぶりのことである。筆者は、政府・与党が、安心して、歴史的な判断に踏み切った、大きな理由の一つとして、若者たちの政治行動の従来の常識を打ち破る傾向が明らかになったことがある、と確信している。
早稲田大学科学総合芸術院准教授の2人の著作『イデオロギーと日本政治――世代でことなる「保守」と「革新」』(19年、新泉社)の労作が、常識を打ち破った。
「保守」といえば、自民党であり、「革新」といえば野党、と考えるのは、いまや間違っている。12年の衆議院選挙を調査対象として、年代別に「保守」と「革新」の認識を調査した結果である。
「40代以下の若い有権者が今日の日本政治において最も『革新』側に位置していると考えているのは、共産党ではなく、日本維新の会やみんなの党といった新党であった」
「若い世代にとって理解される新しい形態のイデオロギー分極度は、デフレや中国の台頭といった課題にいかに対処するかという政策ベースの『対立』争点をめぐるものではなく、伝統的な『日本モデル』維持を目指す政党と、それの解体を目指す政党という、ある意味で『合意』争点をめぐるものと推察できるかもしれない」