2022年12月8日(木)

21世紀の安全保障論

2022年5月11日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 その後2000年代に入り、朝鮮半島情勢は北朝鮮の核実験やミサイル開発で緊迫の度を増し、韓国に在住・滞在する3万人を超す邦人と、8万人を超す米国人の退避をめぐって、日米両政府は連携協力で合意した。主に米軍の艦艇や航空機を使って民間人らを保護する活動にもかかわらず、米軍が利用を提案し続けている約30カ所の空港や港湾について、調査や測量が終了したという話を聞いたことがない。

 日本有事であれば、04年に成立した「特定公共施設利用法」に基づき、政府に空港・港湾利用の強制力があるが、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる危機では、空港や港湾の管理者が米軍の使用を拒否する可能性もある。18年10月、米国知日派の有識者であるリチャード・アーミテージ元国務副長官らがまとめた報告書の中に、「緊急時における米軍による日本の空港・港湾の使用拡大」が盛り込まれたのは、危機において日米同盟が機能しない恐れがあることを危惧しているからにほかならない。

同盟強化を自分事として考える

 日米同盟は真に機能するか――。それは同盟に寄与する三角形の中身が、それぞれ強固か否かにかかっていると言ってもいいだろう。頂点の「自衛隊と米軍の一体化」がいくら強固になったとしても、底辺を支える「米軍への基地提供」は、その負荷の大半を沖縄県と沖縄県民に背負わせたままだ。

 

 「基地を巡って沖縄人(ウチナーンチュ)同士がいがみ合う。その姿を本土(ヤマト)の人は高みから笑っている」――。これは18年8月に急逝した同県の翁長雄志前知事が遺した言葉だが、筆者は基地問題を他人事のように思っている本土の人に失望し、悔しさをにじませた言葉として記憶している。

 そして中段にある「国民の協力」については、緊急時における空港・港湾の使用という一例を挙げただけでも、協力が不十分であることは明らかだろう。ロシアによるウクライナ侵略に加え、ロシアと中国が結束を強化し、中国の台湾侵攻、北朝鮮の暴発といった事態が現実味を帯びるからこそ、多くの国民は日米同盟の強化を望んでいる。

 であるならば、すべての日本人は今、リアリズムの視点で日米同盟を強化するために何ができるのかを自分事として考える必要がある。悪化する戦略環境の中で、沖縄は15日、本土復帰から50年を迎える。私たちにできること、それは米軍への基地提供について沖縄の荷を背負い、民間空港や港湾の使用についてもその必要性についてしっかりと議論し、協力する姿勢を見せることではないだろうか。

  
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