2024年11月24日(日)

日本の漁業は崖っぷち

2013年3月27日

 この競争は、真剣に取り組めば、敗者はなく全員が勝者となれる競争です。資源管理していない場合は、市場から排斥されるだけでなく、魚がいなくなることで消えてしまうのです。漁業者にも水産加工業者にも意識改革が起きることでしょう。まさにイノベーションが起こるのです。

 より具体的な話をすれば、第5回でご紹介した新潟のホッコクアカエビ(甘エビ)のような、科学的な根拠に基づいて漁獲されている水産物を、優先的にスーパーをはじめとする流通業者が扱うようになれば、隣県の漁業者も資源管理競争に参画してくるでしょう。そして、それが様々な種類の水産物に波及していけば、好循環が生まれ資源と水揚げ地である地方が再生していくのです。欧米のスーパーではすでに、資源管理されていない水産物を排除する傾向が年々強まっています。日本は資源管理政策において変わらなければならない時期にきているのです。

TACを毎年上回る日本のスケトウダラ

 前回記述したスケトウダラは、日本では7種類のTAC魚種の一つです。第三者機関である水産エコラベルに、資源管理が適正かどうか客観的な観点から厳正に調査してもらい、改善すべきところは改善すべきです。そして日本でも、国産のスケトウダラを原料とした、水産エコラベルが貼られたフィレオフィッシュが、堂々と販売されていけば、子供たちの中でも身近な魚が話題になり、より多くの国内の水産物を販売していく上でも良い方向に波及していくはずです。

 しかし、図のように漁獲量が右肩下がり続きで、生物学的漁獲許容量(ABC)を、漁獲枠(TAC)が毎年上回ってしまっているような日本のスケトウダラに、残念ながら水産エコラベルが付けられるはずはないのです。当たり前のことなのですが、水産エコラベルをつけられる米国のスケトウダラは、200海里漁業専管海域が設定された1977年以来、TACがABCを上回ることなど一度もありません。(例:2012年 ABC122万トン、TAC120万トン、漁獲量120万トン)。広く現在の資源管理政策の問題点が認識され、水産業全体が変われるかどうかなのです。これは政策の問題です。


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