青森県(陸奥湾)と愛知・三重県(三河湾・伊勢湾)で同じイカナゴで起こった対照的なケースは、一つの限界を考えさせられてしまう例となります。
それは、なぜ同じ魚種なのに、これほどまでに資源回復計画の対応に違いが出てしまったのか? ということです。陸奥湾でも三河湾・伊勢湾と同じような資源管理を、傷が浅いうちに実施していけば、今日のようなことになっていなかったでしょう。それぞれの地域で、様々な方々が頑張られている自主管理ですが、ここに限界を感じざるを得ません。その時の漁業者のメンバー、リーダー等により異なる結果が出てしまうのが、問題なのです。
色々な人がいて、それぞれの考え方があって当たり前です。重要なのは、そこに統一した科学的根拠をベースとする資源管理を当てはめることです。科学的な調査の限界の話から始めるのではなく、漁業者の協力を得て積極的に調査をするのです。日本には、世界トップレベルの調査能力があるはずです。実際にEUや北欧では、より正確なデータを出して欲しいと漁業会社から調査への協力を買って出ます。ノルウェーでも安定してイカナゴが獲れます。しかしながら国が国内の全漁場をまとめて管理しており、州や県によって資源管理の方法が違うことなどないのです。
日本で資源管理競争を起こそう!
第10回で水産エコラベルを巡って、ロシアがラベルの認証を得られていない為に、欧州市場で販売苦戦をし、エコラベルを取るべく巻き返しを図っていることを書きました。利益が絡むことなのでロシアは必死です。
上述したイカナゴは、国が同一基準で科学的に管理することが一番です。しかしながら、現実的に地域や漁場ごとの管理にせざるを得ないのであれば、一つ良い方法があります。それは、自主的な資源管理競争が起こるように持ち掛けるのです。
イカナゴバーガーという商品があるとしましょう。イカナゴバーガーは「資源管理していないものは使用しない」と飲食店やスーパーなどが取り決めて徹底します。そうなると、同じイカナゴであっても店に置かれる地域や漁場のものと、そうでないものがはっきりします。そうなれば、経済的な問題が絡みますので、今回ロシアで起こっているような水産エコラベル獲得競争が各地で起き、資源管理が真剣に検討されます。結果として、資源が回復して水揚げが安定し、水揚げ金額が増えて、地域ごとに再生していくのです。