2024年4月16日(火)

橋場日月の戦国武将のマネー術

2022年6月9日

深まる堺と大徳寺の関係

 三好長慶だってこの大徳寺の祠堂銭マネーを軍資金としてあてにしたけど、堺の豪商たちも大徳寺マネーがあってこその日明貿易だったわけだ。

 万一船が難破したり海賊に襲われたりするリスクもあるものの、中国から無事に船が帰ってくれば、莫大な利益が手に入る。それがどれほどのものかというと、室町幕府への抽分銭(貿易税)として3000~4000貫(30~40億円)を収めても余裕なほど。抽分銭の税率は10%だから、300億~400億円の輸入品売上があったということだ。

 その結果、大徳寺にも種銭が利息付きで返済される(利子2%なら貸し出し月数を掛けて10億円程度の儲けだ!)。堺商人にも大徳寺にも、リスクを遙かに上回るリターンがあり、それが一層、堺と大徳寺を緊密に結びつけていった。

 というわけで、利休の印可も、大徳寺マネーに連なる堺の豪商の一員に加わる、という一面もあったことがお分かりいただけただろう。まぁ、堺からの遣明船派遣自体は、その22年前を最後に結局再開されることは無いんだけどね。

 結果的にそうなっただけだし、堺の貿易はその後南蛮貿易主体に切り替わっていくわけだから、その資金源としても大徳寺とのつながりは一層大事になっていくのだ。まぁ、最終的にはこの大徳寺とのつながりが利休の命取りになるのだが。

【参考文献】
『利休大事典』(淡交社)
『千利休』(村井康彦、講談社学術文庫)
「世界一の東洋古美術商山中商会盛衰記」(桑原住雄、『藝術新潮』1967年1月号所収、新潮社)
『利休の年譜』(千原弘臣、淡交社)
『原本現代訳 遠州高天神城実戦記』(本間清定著、鵜藤満夫訳、三原屋書店)
『茶道古典全集』(淡交社)
『大日本史料 八ノ一八』(東京大学史料編纂所)
『大日本租税志』(清文堂)
『堺 中世自由都市』(泉澄一、教育社)

   
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