2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年6月14日

 経済制裁に関する限り、欧州の結束は保たれている(石油の禁輸ではハンガリーに譲歩を余儀なくされたが)と言い得ようが、武器支援についてのドイツの姿勢は心許ない。戦線が東南部に移るに伴い、4月に西側は榴弾砲や戦車などの重火器を提供することを申し合わせ、ドイツも重火器の提供を約束したが、ショルツ首相がこれを実行することを躊躇し言い逃れをし、自走式榴弾砲パンツァーハウビッツェ2000や自走式対空砲ゲパルト対空戦車の供与が始まったのは最近のことらしい。いずれにせよ、武器支援については米国の存在が圧倒的であり、米国なくしてはウクライナの抵抗は成り立たない状況であるが、それにしても、フランスやイタリアの役割は小さい。

バイデンが示した目標の意味

 現在、ウクライナは守勢に立たされているが、ウクライナを軍事的に支援する西側は耐えて結束を維持し支援を続けられるのだろうか。バイデン米大統領は、5月31日付ニューヨーク・タイムズ紙にウクライナの戦争における米国の目的に関して一文を寄稿しているが、ワシントン・ポスト紙はバイデンが明確な目標を設定したとして評価し、これによって西側の結束を維持し得ようとの社説を書いている。

 バイデンは米国が「彼(プーチン)の追放を試みることはしない」と書き、「ロシアに苦痛を与えるためだけのために」戦闘を長引かせることはしないとも書いている。成程、神経質な欧州の同盟国を安心させる効果はあろう。しかし、武器支援については「(ウクライナ)が戦場で戦えて交渉のテーブルで可能な限り強い立場に立てるようにするため」だと書いているが、この目標には幅があり過ぎて、とても明確な目標とは言えないと思われ、欧州が明確な目標と受け取るとも思えない。

 バイデンの寄稿文は、バイデン政権がウクライナへの射程の長い(70キロメートル)多連装ロケット砲システムの供与(但し、国境を越えてロシアに対して使用することを禁じている)を新たに決定したことに対して、ロシアが過剰な反応をしないよう書かれたものかも知れない。バイデン政権としては、北大西洋条約機構(NATO)の場で少なくとも2月24日の線までロシアを押し返すという当然の目標を欧州と共有することに務めるべきものと思われる。

   
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